企業防災とは?取り組み内容と備蓄品の目安を紹介

2024.10.1

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企業防災とは?取り組み内容と備蓄品の目安や事例を紹介

地震や異常気象等の自然災害が頻発する日本において、企業の防災対策はますます重要性を増しています。

企業防災とは、災害時に従業員や顧客の安全を守りつつ、事業継続を図るために企業が実施する総合的な対策のことです。

この記事では、企業防災の定義や目的、具体的な取り組み内容を紹介します。内容を理解して、災害時の従業員の安全や事業継続性の確保に向けた対策に役立ててください。

企業防災とは?

企業防災とは?

企業防災とは、企業が災害に備えて行う包括的な対策を指します。

企業防災は単なる緊急時対応だけでなく、企業の事業継続性確保と、従業員および地域社会の安全を守ることを目的としています。

適切な企業防災により、災害時の被害を最小限に抑え、迅速な復旧と事業継続の実現が可能となります。

企業防災の定義と目的

企業防災とは、企業が従業員や顧客の安全、自社の資産を守るために実施する包括的な災害対策を指します。
企業防災の主な目的は以下の5つです。

  • ●従業員と顧客の安全確保:迅速な避難誘導と適切な情報提供
  • ●企業資産の保護:建物や設備の耐震化、重要データのバックアップ
  • ●事業継続の確保:BCPの策定と実施、代替拠点の確保
  • ●社会的責任の遂行:地域社会との連携、災害時の地域支援活動
  • ●法的義務の履行:労働安全衛生法の遵守、地域条例に基づく防災対策

企業は従業員や顧客の安全を最優先に、防災活動に取り組む必要があります。同時に、地域社会の一員として被害軽減や復旧・復興への貢献も求められています。

適切な企業防災は、人命保護や事業継続、社会的信頼性の維持等多面的な効果をもたらし、企業の持続可能性を高める重要な取り組みです。

防災対策が求められる背景と現状

日本では、自然災害の増加と激甚化により企業防災対策の重要性が高まっています。

地震大国である日本は、近年異常気象による災害も頻発しており、2011年の東日本大震災や2018年の西日本豪雨等、大規模災害が相次いでいます。

国の防災基本計画では、企業の役割として「生命の安全確保」「二次災害の防止」「事業の継続」「地域貢献・地域との共生」を挙げています。

「内閣府の調査(令和5年度)」によれば、大企業の76.4%(2021年度比 5.6%増)、中堅企業の45.5%(2021年度比 5.3%増)がBCP(事業継続計画)を策定しています。「策定中」を含めると、大企業は85.6%、中堅企業は57.6%に達します

このデータから、大企業を中心にBCP の策定が進んでいることがわかります。しかし、特に中小企業では十分な対策が取られていない場合も多く、BCPの実効性ある運用や定期的な見直し、従業員の防災意識向上等、課題も残されています。

企業防災の法的義務と安全配慮義務

企業防災の法的義務と安全配慮義務

企業防災は一般的に「努力義務」とされ、具体的な罰則規定はありませんが、労働契約法と労働安全衛生法により、企業には従業員の安全確保義務が課されています

労働契約法第5条では、「使用者は、労働契約に伴い、労働者が『生命、身体等の安全を確保』しつつ労働できるよう必要な配慮をする。」と定められています。

また、労働安全衛生法 第1章 第3条 第1項では、「事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。」と定めています。

法的根拠に基づく安全配慮義務とは、使用者が労働者の生命・身体・健康を危険から保護するよう配慮すべき義務を指します。

そのため、企業防災は単なる努力義務ではなく、法的・社会的責任として真摯に取り組むべき重要な課題といえます。

安全配慮義務違反のリスク

企業が安全配慮義務に違反すると、以下の3つの大きなリスクが生じます。

  • ●損害賠償請求のリスク
  • ●企業イメージの低下
  • ●行政からの勧告

まず、企業の義務違反によって労働者が損害を受けた場合、治療費や休業補償、慰謝料等の賠償を請求されるおそれがあります。

また、安全配慮義務違反が公になれば、社会的信用を失い、顧客離れや売上低迷といった長期的な損失につながるでしょう。失った信頼の回復には多大な時間とコストがかかります。

さらに、違反が労働基準法に抵触する場合、労働基準監督署からの指導や勧告を受け、悪質な場合は社名の公表といった更なるリスクに発展します。

リスクを回避するためには、日常的に従業員の安全と健康を確保するための対策を講じることが不可欠です。

企業防災の取り組み内容

企業防災の取り組み内容

企業防災の主な取り組み内容は、以下のとおりです。

取り組み内容 具体的内容
リスク評価
  • ●自社事業に影響を与える災害を特定し、影響度を評価
企業防災マニュアルの作成
  • ●災害時の初期対応、緊急避難、救助活動、事業継続等の手順を明確化
事業継続計画(BCP)の策定
  • ●重要業務の特定
  • ●復旧目標時間の設定
  • ●代替戦略の策定
防災セット・備蓄品の準備
  • ●食料、飲料水、医薬品等の備蓄
  • ●非常用電源の確保
安否確認方法の決定・情報収集
  • ●従業員の連絡先リスト作成
  • ●安否確認システムの導入検討
従業員への情報周知と防災訓練の実施
  • ●定期的な訓練実施
  • ●避難経路・場所の周知
  • ●役割分担の明確化
緊急時体制の構築
  • ●指揮命令系統の確立と情報共有の仕組みを整備

上記の内容を定期的に見直すことで、企業の防災力を高め、災害時の被害を最小限に抑えられます。

リスク評価・企業防災マニュアルの作成

リスク評価は、企業が直面するおそれのある災害リスクを特定し、影響度を評価するプロセスです。

主なポイントとして、地域特性の把握、過去の災害事例分析、事業への影響度評価、発生頻度と影響度のマトリクス分析があります。

例えば、地震リスク、水害リスク、サプライチェーンリスク等を評価します。企業防災マニュアル作成のポイントは以下のとおりです。

  • ●人命の安全確保を最優先とし、地域社会の一員としての視点も含める
  • ●5W2H :WHY(目的)、WHAT(実施事項)、WHEN(実施順序)、WHO(実施者)、WHERE(実施場所)、HOW TO(実施方法)、HOW MUCH(数量・分量)を活用し、明確な指示を記載する
  • ●図表、写真、動画を効果的に使用し、「じっくり読ませない」ことを意識する
  • ●自社の業務内容や体制に応じた内容にする

上記のポイントを押さえ、実効性の高いマニュアルを作成し、定期的な見直しと訓練を通じて検証することが重要です。

事業継続計画(BCP)の策定

事業継続計画(BCP)の策定手順は以下のとおりです。

役割 責任
1. 基本方針の策定
  • ●経営者による方針決定
  • ●BCPの目的・対象範囲の明確化
2. 体制の整備
  • ●BCP策定チームの編成
  • ●役割・責任の明確化
3. 重要業務の特定
  • ●優先的に継続・復旧すべき業務の選定
  • ●目標復旧時間の設定
4. リスク評価
  • ●想定されるリスクの洗い出し
  • ●事業への影響度分析
5. 事前対策の検討
  • ●ハード面(設備の耐震化等)
  • ●ソフト面(マニュアル整備、訓練計画等)
6. 緊急時の対応計画策定
  • ●初動対応の手順策定
  • ●事業継続の手順策定
7. 教育・訓練計画の策定
  • ●従業員への教育プログラム作成
  • ●定期的な訓練計画の立案
8. 点検と見直し
  • ●BCPの定期的な評価
  • ●必要に応じた改訂

策定にあたっては、自社の実情にあわせた実現可能な計画を作成し、完璧を求めすぎず段階的に改善していくことが重要です。また、経営者のリーダーシップと全社的な取り組み、定期的な見直しと更新を心がけましょう。

BCPは策定して終わりではなく、継続的な改善と運用、定期的な訓練と評価を通じて実効性を高めていく必要があります。BCPについては以下の記事で詳しく紹介しているため、ぜひあわせてご覧ください。

安否確認方法の決定・情報収集

災害時にどのような方法で従業員の安否を確認するか決めておく必要があります。主な安否確認方法とメリット・デメリットは以下のとおりです。

連絡手段 メリット デメリット
電話
  • ●直接会話可能
  • ●詳細な状況確認可能
  • ●回線混雑時につながりにくい
  • ●一度に多人数への連絡が困難
SNS
メッセージアプリ
  • ●即時性が高い
  • ●グループでの情報共有が容易
  • ●インターネット接続が必要
  • ●アプリのインストールが必要
メール・SMS
  • ●一斉送信が可能
  • ●記録が残る
  • ●確認に時間がかかる
  • ●通信障害の影響を受けやすい
災害用伝言ダイヤル(171)
災害用伝言板(web171)
  • ●災害時専用のため比較的つながりやすい
  • ●公衆電話からも利用可能
  • ●使用方法の周知が必要
  • ●情報の更新が手動
安否確認システム
  • ●自動送信・集計が可能
  • ●複数の連絡手段を統合
  • ●導入・運用コストがかかる
  • ●システムの習熟が必要

安否確認の方法は、優先度を決めて複数用意することが重要です。方法決定後は、従業員の連絡先、緊急連絡先、居住地情報等を収集し、適切に管理・更新しましょう。安否確認方法の特徴については、以下の記事で詳しく紹介しています。

従業員への関連情報周知と防災訓練の実施

作成したマニュアルを活用するために、まずは従業員に周知する必要があります。主な周知方法は、説明会の開催や社内文書・メールでの通知等です。

定期的な訓練実施も不可欠で、法律上年1回以上の実施が義務付けられています。訓練には、避難訓練や消火訓練、安否確認訓練等があり、さまざまな災害シナリオを想定して行います。

また、社内で防災訓練を指導するインストラクターの育成も重要です。災害後のメンタルヘルスケアも考慮し、ストレス軽減プログラムやカウンセリングサービスの提供体制を整えておくと良いでしょう。

定期的な情報更新と再周知、実践的な訓練の実施、訓練結果の評価と改善を通じて、従業員の防災意識を高め、実際の災害時に対応できる体制を構築することが重要です

防災訓練の内容は以下の記事で詳しく紹介しているため、内容を理解して実効性のある訓練を実施しましょう。

防災セット・備蓄品の準備

企業の防災セット・備蓄品の準備は、従業員の安全確保と事業継続の観点から非常に重要です。主な備蓄品は以下のとおりです。

分類 主な備蓄品
水・食料品
  • ●飲料水
  • ●非常食(レトルト食品、缶詰、乾パン等)
安全用グッズ
  • ●ヘルメット
  • ●懐中電灯(予備電池含む)
  • ●携帯ラジオ
  • ●防災ずきん
救急用品
  • ●救急箱(包帯、消毒液、絆創膏等)
  • ●常備薬
衛生用品
  • ●マスク
  • ●消毒液
  • ●トイレットペーパー
  • ●簡易トイレ
  • ●携帯トイレ
その他
  • ●毛布や防寒具
  • ●アルミブランケット
  • ●携帯充電器
  • ●工具セット

備蓄量の目安としては、従業員の3日分の飲料水と食糧、その他災害時に必要な物資を備蓄するよう努めましょう。

備蓄品の管理方法のポイントは以下のとおりです。

  • ●ローリングストック法の活用
  • ●定期的な在庫確認(少なくとも年1回)
  • ●適切な保管場所の選定
  • ●備蓄品リストの作成と更新
  • ●従業員への周知

ローリングストック法とは、食品を普段から少し多めに買い置きして期限の近いものから消費し、消費した分を買い足すことです。これにより、常に新しい食品を備蓄でき、期限切れによる大量廃棄等を防げます。
企業の規模や業種、立地条件に応じて必要な備蓄品や量を判断し、定期的な防災訓練時に使用方法を確認することが効果的です

自社に合った防災備蓄で災害時の備えを

防災セットや備蓄品の準備は、防災対策の基本です。企業の業種や規模、エリアをふまえて目的(避難対策や帰宅待機対策等)を設定し、想定期間や滞在人数に応じた備蓄を用意しておきましょう。

自社に必要な備蓄内容が分からず検討が進まない場合は、防災備品に詳しい外部の企業に委ねるのもひとつの方法です。

例えば、関西電力が提供する 「防災備品パッケージプラン」 では、災害時に安全を確保し、生活を維持するために必要な物品を一括で準備できます。

パッケージプランの内容は、企業の備蓄目的や予算、現状に沿って柔軟に変更可能です。備蓄品の準備についてお悩みの際は、お気軽にお問い合わせください。

関西電力の安否確認システム「ANPiS」で災害時に備えよう

企業防災において、災害時には迅速な安否確認が不可欠です。そこで、安否確認システムの導入が推奨されます。

関西電力が提供する「ANPiS(アンピス)」は、必要な機能を十分に備えた安否確認システムです。BCP(事業継続計画)の一環として企業を支え、災害時だけでなく平常時にも活用できる多機能な設計が特徴です。

【利用できる機能】

  • ●気象庁情報と自動連携(地震、特別警報等)
  • ●従業員の回答結果自動集計
  • ●未回答者への自動再配信
  • ●手動配信によるパンデミック対応
  • ●アンケートや会議の出欠確認等平常業務への応用
  • ●安否登録の際のID・パスワードスキップ
  • ●部門横断グループ設定
  • ●個人情報の秘匿性確保
  • ●家族の安否登録機能
  • ●LINE配信(有償オプション)

上記のとおり多機能でありながら、初期費用無料で月額6,600円から導入いただけます。無料トライアルも可能ですので、安否確認システムの導入を検討しているなら、ぜひお気軽にご相談ください。

企業防災は従業員や顧客の安全を守るためにも不可欠

企業防災は、従業員と顧客の安全確保、事業継続の維持、そして企業の社会的責任を果たすために不可欠な取り組みです。法的にも従業員の安全確保が義務付けられており、防災対策の強化は企業の基本的責務といえます。

効果的な企業防災には、リスク評価と綿密な防災計画の策定が重要です。これにより、災害時の迅速かつ適切な対応が可能となります。また、防災マニュアルの周知と定期的な訓練実施を通じて、従業員の災害対応能力を高めることが求められます。

さらに、安否確認システムの導入も効果的な対策のひとつです。関西電力の「ANPiS」は、多機能かつ手頃な価格で利用可能な選択肢として、企業の防災対策強化に貢献します。もちろん全国での利用が可能です。

企業防災は継続的な改善と従業員の意識向上が鍵となります。平常時からの準備と訓練を通じて、災害に強い組織づくりを目指しましょう。

三沢 おりえ(みさわ おりえ)

監修者 三沢 おりえ(みさわ おりえ)

総合危機管理アドバイザー
防犯・防災、護身術の講演会やセミナー、イベント、メディア対応等幅広く活動。日本一非常食を食べていると自負する非常食マイスターでもある。総合防犯設備士、危機管理士、防災士。

サービス概要資料

安否確認システム
「ANPiS」

BCP策定の第一歩は、安否確認から!関西電力が提供する「安否確認システム(ANPiS)」のサービス概要をご紹介します。

資料の一部をご紹介

  • 安否確認システム(ANPiS)とは
  • 選ばれる理由
  • サービスの特徴
  • よくあるご質問

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