会社の防災訓練・避難訓練のやり方と手順、シナリオ作成例を解説
2026.2.24
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目次
台風や地震等の災害は、いつ起こるかを正確に予測することができません。
企業にとって、防災訓練は災害時に被害を最小限に抑え、従業員の安全を確保するために重要な取り組みのひとつです。
一方で、防災訓練が法的義務となっている企業も多いものの、
「具体的にどのような手順で進めればよいのか分からない」
「毎年同じ内容になってしまっている」
といった悩みを感じている担当者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、会社で実施する防災訓練・避難訓練について、基本的な考え方から実施方法、シナリオ作成のポイントまで解説します。
あわせて、災害発生時の初動対応を支援する仕組みとして、関西電力が提供する安否確認システム「ANPiS(アンピス)」も紹介します。
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防災訓練とは?
防災訓練とは、災害発生時に被害を最小限に抑え、適切な対応を取るために実施される訓練です。
訓練の目的は、主に以下の3つが挙げられます。
- ●災害時の正しい行動を身につけること
- ●防災への意識を高めること
- ●防災計画や設備が本当に役立つか確かめること
防災訓練にはさまざまな種類があり、避難訓練はその代表的な訓練の一つです。避難訓練は、災害発生時に安全な場所へ速やかに避難できるかを確認する訓練であり、防災訓練全体の一部として位置づけられています。
防災訓練では、避難行動の確認に加え、安否確認や初期対応、情報伝達等も含めて行うことで、災害時に必要となる対応を総合的に身につけることができます。
企業と自治体は、それぞれの立場にあわせた準備が必要なため、訓練の内容が異なります。次に、企業と自治体それぞれの防災訓練について詳しく解説します。
会社に義務付けられている防災訓練の役割
企業における防災訓練は、法律で定められた義務です。消防法第36条の「防災管理定期点検報告」に基づき、大規模建築物等では年1回以上の実施が求められています。
また、防災訓練の中でも避難訓練は重要な位置付けにあり、消防法第8条により実施が義務付けられています。
建物の用途によって実施回数は異なりますが、一般的な企業の事業所は「非特定用途防火対象物」に該当し、年1回以上の避難訓練の実施が必要とされています。
一方、百貨店、カラオケボックス、病院等、不特定多数の人が利用する建物は「特定用途防火対象物」に分類され、年2回以上の避難訓練を行う必要があります。
防災訓練には次のような大切な役割があります。
- ●従業員の防災意識向上
- ●災害時の適切な行動の習得
- ●防災計画や設備の有効性の検証
- ●災害時の役割分担と指示系統の明確化
- ●組織的な対応力の強化
防災訓練を通じて災害への備えを着実に整えることで、災害時に従業員の命や企業の存続を守ることができます。
自治体が行う防災訓練との違い
自治体が行う防災訓練は、「自分たちの地域は自分たちで守る」という理念のもと、近所の人々の協力を促し、災害時に迅速な対応をとれるようにすることが目的とされています。
企業と自治体の防災訓練の主な違いは以下のとおりです。
| 項目 | 企業 | 自治体 |
|---|---|---|
| 参加者の範囲 | 主に従業員 | 幅広い年齢層の地域住民 |
| 訓練内容 | 業務継続に焦点 | 炊き出しや要援護者支援等さまざま |
| 地域資源の活用 | 主に自社施設内で実施 | 公園や学校を避難所として使用 |
| 継続性 | 法令遵守と従業員の安全確保が主目的 | 長期的な地域防災力向上を目指す |
また、自治体の訓練には公権力がないため、参加は自発的です。これが住民の主体性を育みます。
会社で実施される防災訓練の種類と内容
企業で実施される代表的な防災訓練には、次のようなものがあります。
| 防災訓練の種類 | 内容とポイント |
|---|---|
| 通報訓練 |
|
| 避難訓練 |
|
| 初期消火訓練 |
|
| 応急手当訓練 |
|
| 安否確認訓練 |
|
専門的な内容を含む訓練では、消防署等の協力を得ると良いでしょう。また、自治体と連携した訓練も行われます。例えば、帰宅困難者の受け入れや物資供給の訓練等があります。
定期的な訓練で備えを強化し、災害に強い企業を目指しましょう。
通報訓練
通報訓練は、火災発生時に冷静に対応する力を養う大切な取り組みです。正確な情報を迅速に伝えることで、被害を最小限に抑えられます。訓練の基本的な流れとポイントは以下のとおりです。
【通報訓練の基本的な流れ】
- 1.火災の種類を伝える(建物火災、車両火災等)
- 2.火災場所を特定する(住所、建物名等)
- 3.火災状況を説明する(燃えているもの、煙の量、被害状況等)
- 4.自分の名前と連絡先を伝える
【通報訓練のポイント】
- ●落ち着いてゆっくり話す
- ●正確な情報を伝える
- ●聞き取りやすい声で話す
- ●通報後は消防隊の到着を待つ
上記のポイントを意識して練習することで、実際の緊急時にも適切に対応できます。
避難訓練
避難訓練は、災害時に安全に避難する方法を身につけ、パニックを防ぐことが目的です。主な内容は以下の4つです。
【避難訓練の主な内容】
| 避難経路の確認 |
|
|---|---|
| 避難場所の確認 |
|
| 避難時の注意点の確認 |
|
| 避難完了後の点呼 |
|
避難訓練の効果を高めるコツは、さまざまな災害シナリオで訓練することです。また、要配慮者の支援方法も必ず確認しましょう。
初期消火訓練
初期消火訓練は、火災発生初期の段階で適切に消火活動を行うための訓練です。適切な消火活動で、被害を最小限に抑えることができます。訓練の主な内容は以下のとおりです。
【初期消火訓練の主な内容】
| 消火器の基本的な使い方 |
|
|---|---|
| 消火器の種類と性能の理解 |
|
| 屋内消火栓の使用方法 |
|
| 安全な初期消火の留意点 |
|
訓練の際は実際に消火器を使用し、模擬火災での状況判断も重要です。
応急手当訓練
応急手当訓練は、災害時に負傷者が発生した際に適切な対応ができるようにするための訓練です。応急手当は、救急車が到着するまでの間に行う手当てのことで、傷病者の救命効果を高め、症状の悪化を防ぐ上で重要です。訓練の主な内容には以下が含まれます。
【応急手当訓練の主な内容】
- ●心肺蘇生法
- ●AEDの使用方法
- ●止血法
- ●骨折や捻挫の処置
- ●熱中症対策
特に心肺停止の場合、その場に居合わせた人による迅速かつ適切な応急手当が、救命率を大きく向上させます。
効果的な訓練のために、実践的なシミュレーションや専門家による指導を取り入れ、東京消防庁等の公的機関が提供する講習の活用も検討しましょう。
また、訓練でも身の安全が第一であることを忘れずに行うことが大切です。
安否確認訓練
安否確認訓練は、災害時に従業員の状況を素早く把握するための訓練です。訓練の基本的な流れは以下のとおりです。
【安否確認訓練の基本的な流れ】
- 1.自分の安全を確保する
- 2.周囲の人の安全を確認する
- 3.周辺の状況を把握する
- 4.責任者に報告する
安否確認訓練には、使いやすいシステムを導入すると効果的です。例えば、関西電力の「ANPiS(アンピス)」は、直感的に操作ができるシンプルで使いやすい操作性が特徴です。気象庁と連携して常に気象情報を取得しているため、災害時には自動でメールを配信し、回答結果も自動で集計する機能があります。
ただし、操作がどれだけ簡単でも、慣れていないと戸惑ってしまうこともあるため、以下の流れでテスト配信を行うことをおすすめします。
- 1.テスト配信の日時を決める
- 2.全員が適切に応答できるか確認する
- 3.応答時間や回答率を分析し、改善点を見つける
- 4.結果に基づいてシステムの設定を見直す
システムを利用した安否確認訓練は企業単独でも実施しやすい訓練なので、定期的に行いましょう。
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安否確認の方法については、以下の記事で詳しく紹介しています。
関連記事:【企業向け】災害時の安否確認方法とは?目的とポイントや注意点を解説
会社での防災訓練のやり方と手順
防災訓練を行う際は、適切な方法と手順を選ぶことが大切です。まず、訓練の種類を決めましょう。
| 防災訓練の種類 | 内容 |
|---|---|
| 展示型訓練 | 防災知識を展示や講演で学ぶ |
| 実技型訓練 | 実際の行動で防災技能を習得 |
| 図上訓練 | 地図や図面で災害対応を検討 |
ここでは、実技型訓練の流れを紹介します。
【実技型訓練の基本的な流れ】
- 1.訓練計画を立案する
- 2.災害対策マニュアルを作成する
- 3.訓練計画・テーマを決める
- 4.従業員の役割分担を決める
- 5.防災訓練の概要を従業員に周知する
- 6.災害対策マニュアル・訓練計画に沿って防災訓練を実施する
- 7.実施後は内容を振り返り、次の訓練や災害時に備える
それぞれの手順について詳しく解説します。
災害対策マニュアルを作成する
災害対策マニュアルは、防災訓練の骨組みとして事前に指針を決めておきましょう。作成手順は以下のとおりです。
| 組織体制と役割分担の決定 |
|
|---|---|
| 情報収集体制の記載 |
|
| 緊急連絡網の作成 |
|
| 初期対応・避難の整理 |
|
企業防災マニュアルに盛り込むべき主な内容は以下のとおりです。
- ●災害時の役割明確化
- ●備蓄品のリスト化
- ●情報資産の保護方法
- ●避難経路の確認
- ●安否確認の方法
マニュアルは定期的に更新し、訓練結果や組織変更を反映させましょう。実際の災害経験も活かし、常に最新で実効性のある内容に保つことが重要です。
関連記事:防災倉庫の中身とは?防災用品一覧や設置・保管場所のポイントを解説
緊急連絡網については、以下の記事で詳しく紹介しています。
関連記事:企業向け緊急連絡網の作り方は?連絡手段の特徴や運用時の注意点を解説
訓練計画・テーマを決める
防災訓練の計画とテーマ決定は、効果的な訓練の基礎となります。防災マニュアルを基に、目的と内容を明確にしましょう。
決めるべき主な内容は以下のとおりです。
- ●目的:達成したい具体的な目標
- ●実施日・スケジュール:日時と詳細な流れ
- ●実施場所:訓練を行う具体的な場所や範囲
- ●参加者:参加する従業員の範囲と役割
- ●必要な備品:使用する機材や資材のリスト
- ●関係団体との連携:消防署や自治体との協力体制
- ●訓練後の流れ:振り返りや評価方法、報告書作成等
テーマや課題を明確にすることで、シナリオ作成がスムーズになります。以下のポイントを意識してシナリオを作成しましょう。
【訓練シナリオ作成のポイント】
- ●想定する災害の種類と規模を決める
地震・火災・台風・豪雨等、発生しうる災害を具体的に設定します。
あわせて「勤務時間中/夜間」「在館者が多い/少ない」等、被害規模や状況も想定します。 - ●時系列に沿った具体的な状況を設定する
「発災直後」「初動対応」「避難開始」「避難完了後」等、時間の経過に沿って場面を設定し、各段階で起こる事象(停電、通路の封鎖、負傷者発生等)を盛り込みます。 - ●各参加者の役割と行動を明確にする
防災管理者、各フロア責任者、一般従業員等、立場ごとに「何を判断し、どう行動するのか」を具体的に定めます。特に指示系統や情報共有の流れは明確にしておくことが重要です。 - ●予想される課題や問題点を組み込む
連絡が取れない、想定ルートが使えない、マニュアル通りに進まない等、あえて問題が発生する状況を設定することで、実践的な対応力を養えます。 - ●評価ポイントを設定する
「初動対応までにかかった時間」「指示が正しく伝達されたか」「避難誘導は安全だったか」等、訓練後に振り返るための評価基準を事前に決めておきます。
作ったシナリオは参加者に事前周知し、訓練後の改善も忘れずに行ってください。
従業員の役割分担を決める
実技型防災訓練を効果的に行うには、適切な役割分担が重要です。
| 役割 | 責任 |
|---|---|
| 統括指揮者 |
|
| 情報連絡班 |
|
| 避難誘導班 |
|
| 装備品等準備班 |
|
| 救護班 |
|
| 消火班 |
|
| 安否確認班 |
|
役割を明確にすることで、訓練や実際の災害時にスムーズに行動できます。また、以下の点に注意して役割分担を行いましょう。
- ●役割の重複を避ける
- ●リーダーと副リーダーを指名する
- ●シフト制の場合は人数調整を行う
- ●能力や経験を考慮して割り当てる
- ●定期的に役割を見直す
防災訓練の概要を従業員に周知する
防災訓練の概要が決定したら、従業員全員に周知しましょう。参加漏れを防ぐため、朝礼や夕礼での口頭告知、全社メール配信等、複数の手段を用いて情報を伝達します。
特にシフト制を採用している企業では、当日の勤務状況を考慮し、全従業員が参加できるよう配慮が必要です。場合によっては複数回の訓練実施を検討するのも一案です。
また、オンラインで行う安否確認訓練やリモート防災訓練は、対面型の訓練に比べて参加の強制力が低くなりやすいです。そのため、訓練の重要性を強調し、積極的な参加を促すことが求められます。
防災意識を常に高く保つには、平常時からの定期的な教育や小規模訓練の実施が効果的です。年間計画を立て、防災教育を新入社員研修や定期研修に組み込む等、継続的に取り組みましょう。
災害対策マニュアル・訓練計画に沿って防災訓練を実施する
防災訓練を効果的に実施するには、事前に策定した災害対策マニュアルと訓練計画に沿って行うことが重要です。当日の進行をスムーズにするため、全体を統括するリーダーを事前に指名しておきましょう。
リーダーは訓練の全体像を把握し、参加者への適切な指示や想定外の状況への対応を行います。リーダー不在では、参加する従業員が混乱し、訓練の効果が大幅に低下するおそれがあります。
実施後は内容を振り返り、次の訓練や災害時に備える
防災訓練の実施後は、内容を詳細に振り返ることが重要です。
計画との整合性や目標達成度、参加者の理解度と行動の適切さ、想定外の事態への対応等を評価しましょう。良かった点は強化して次回の訓練でも継続させ、不備や課題は明確にして具体的な改善策を検討します。
振り返り内容をもとに災害対策マニュアルを更新すれば、次の訓練がより実効性の高いものになります。また、訓練の概要や結果、課題や改善策をまとめた報告書を作成し、組織全体で共有することで、防災意識の向上につなげましょう。
しかし、年に一度の訓練だけでは、いざという時に適切に行動することは難しいかもしれません。年間計画を策定し、さまざまな災害シナリオや訓練内容を組み込んだうえで、最低でも年2回以上の訓練実施を目指しましょう。
【災害別】シナリオの作成例

防災訓練は、毎回同じシナリオでは想定外の状況に対応できないおそれがあります。
地震・火災・水害等災害の種類ごとにシナリオを用意し、それぞれの特性に応じた訓練を行うとよいでしょう。
災害の種類別でのシナリオの作成例は以下のとおりです。
火災の場合
- ① 火災の覚知
火災報知器の作動、または従業員による火災発見を想定します。 - ② 現場確認・全体周知
火災を確認後、非常ベルや館内放送により建物全体へ周知します。
同時に消防署への通報を行い、防火管理者の指示のもと避難を開始します。 - ③ 初期消火
初期消火担当者は消火器等を使用して消火を実施します。
火が天井に達する等危険と判断した場合は、無理をせず消火を中止し避難に切り替えます。 - ④ 避難誘導
避難誘導担当者は、安全な避難ルートと避難場所を指示します。
自力で避難が難しい方や配慮が必要な方には、状況に応じた支援を行います。 - ⑤ 安否確認・消防隊への情報提供
避難完了後、点呼を行い安否を確認します。
消防隊が到着している場合は、避難状況や未確認者の有無を正確に報告します。 - ⑥ 訓練の振り返り
訓練終了後、問題点や改善点を整理し、次回の訓練に反映します。
地震の場合
- ① 緊急地震速報の発表
緊急地震速報が流れたことを、放送等で建物全体に周知します。 - ② 身の安全を守る行動
机の下にもぐる、窓や棚から離れる等、揺れに備えた行動を取ります。 - ③ 被害状況の確認
揺れが収まった後、建物内の安全状況や負傷者の有無を確認します。 - ④ 避難の判断・指示
二次災害の危険性を考慮し、必要に応じて避難誘導を開始します。 - ⑤ 避難誘導・安否確認
安全なルートで避難を行い、避難完了後に点呼で安否を確認します。 - ⑥ 訓練の振り返り
初動対応や情報伝達の適切さを振り返り、改善点を洗い出します。
水害の場合
- ① 情報収集・全体周知
気象情報や水位情報を収集し、館内放送等で建物全体に共有します。 - ② 避難の判断・指示
浸水状況や今後の予測を踏まえ、避難の要否を判断します。
ひざ上までの浸水や移動が危険な場合は、無理に屋外へ出ず、建物の高所や近隣の高い建物への垂直避難を想定します。 - ③ 避難誘導
状況に応じた安全な避難方法・避難場所を指示します。 - ④ 安否確認
避難完了後、点呼を行い全員の安否を確認します。 - ⑤ 訓練の振り返り
判断のタイミングや情報共有の流れを見直し、次回の訓練に活かします。
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防災訓練は企業が災害時に適切に対応し、従業員と企業資産を守るための重要な取り組みです。防災訓練は法的義務でもあり、企業は法令に従って訓練を実施し、従業員の安全確保に努める必要があります。
訓練を通じて、企業は防災計画や設備の有効性を確認し、災害時の適切な対応能力を向上させることができます。効果的な訓練実施のためには、目的や内容を明確にし、適切な役割分担や現実的な訓練シナリオの作成が重要です。
また、防災訓練は一度きりのイベントではなく、定期的に実施し、その都度訓練結果をもとにマニュアルや対応策の見直しを行うことが大切です。
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監修者 三沢 おりえ(みさわ おりえ)
総合危機管理アドバイザー
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