防災訓練の内容とは?必要な理由や種類、企業での実施方法や流れを解説

2024.10.1

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台風や地震等の災害はいつ起こるかわかりません。そのような不測の事態に備え、企業が行うべき重要な取り組みのひとつが防災訓練です。防災訓練は、災害発生時に被害を最小限に抑え、従業員の安全を確保するために欠かせません。

多くの企業にとって防災訓練は法的義務となっていますが、いざ実施しようとしても、具体的な手順や内容がわからず、戸惑う方もいるでしょう。

この記事では、防災訓練の意義や必要性から、具体的な種類や内容、実施方法まで詳しく解説します。通報訓練、避難訓練、初期消火訓練等、さまざまな訓練の特徴や効果的な実施のポイントも紹介するため、参考にしてください。

防災訓練とは?

防災訓練とは?

防災訓練とは、災害発生時に被害を最小限に抑え、適切な対応を取るために実施される訓練です。

訓練の目的は、主に以下の3つが挙げられます。

  • ●災害時の正しい行動を身につけること
  • ●防災への意識を高めること
  • ●防災計画や設備が本当に役立つか確かめること

企業と自治体は、それぞれの立場にあわせた準備が必要なため、訓練の内容が異なります。次に、企業と自治体それぞれの防災訓練について詳しく解説します。

企業で実施する防災訓練の必要性

企業における防災訓練は、法律で定められた義務です。消防法第36条の「防災管理定期点検報告」に基づき、大規模建築物等では年1回以上の実施が求められています

防災訓練には次のような大切な役割があります。

  • ●従業員の防災意識向上
  • ●災害時の適切な行動の習得
  • ●防災計画や設備の有効性の検証
  • ●災害時の役割分担と指示系統の明確化
  • ●組織的な対応力の強化

防災訓練を通じて災害への備えを着実に整えることで、災害時に従業員の命や企業の存続を守ることができます。

自治体が行う防災訓練との違い

自治体が行う防災訓練は、「自分たちの地域は自分たちで守る」という理念のもと、近所の人々の協力を促し、災害時に迅速な対応をとれるようにすることが目的とされています。
企業と自治体の防災訓練の主な違いは以下のとおりです。

項目 企業 自治体
参加者の範囲 主に従業員 幅広い年齢層の地域住民
訓練内容 業務継続に焦点 炊き出しや要援護者支援等さまざま
地域資源の活用 主に自社施設内で実施 公園や学校を避難所として使用
継続性 法令遵守と従業員の安全確保が主目的 長期的な地域防災力向上を目指す

また、自治体の訓練には公権力がないため、参加は自発的です。これが住民の主体性を育みます。

防災訓練の種類と内容

防災訓練の種類と内容

企業で実施される代表的な防災訓練には、次のようなものがあります。

防災訓練の種類 内容とポイント
通報訓練
  • ●緊急時の正確な情報伝達を学ぶ
  • ●冷静に対応することが大切
避難訓練
  • ●安全な避難経路と場所を確認する
  • ●パニック状態も想定
初期消火訓練
  • ●消火器の使い方を実践的に学ぶ
  • ●消防署の協力が効果的
応急手当訓練
  • ●基本的な救命技術を身につける
  • ●定期的な練習が大切
安否確認訓練
  • ●従業員の無事を確認する手順を確認する
  • ●複数の連絡手段を用意することが大切

専門的な内容を含む訓練では、消防署等の協力を得ると良いでしょう。また、自治体と連携した訓練も行われます。例えば、帰宅困難者の受け入れや物資供給の訓練等があります。

定期的な訓練で備えを強化し、災害に強い企業を目指しましょう。

通報訓練

通報訓練は、火災発生時に冷静に対応する力を養う大切な取り組みです。正確な情報を迅速に伝えることで、被害を最小限に抑えられます。訓練の基本的な流れとポイントは以下のとおりです。

【通報訓練の基本的な流れ】

  • 1.火災の種類を伝える(建物火災、車両火災等)
  • 2.火災場所を特定する(住所、建物名等)
  • 3.火災状況を説明する(燃えているもの、煙の量、被害状況等)
  • 4.自分の名前と連絡先を伝える

【通報訓練のポイント】

  • ●落ち着いてゆっくり話す
  • ●正確な情報を伝える
  • ●聞き取りやすい声で話す
  • ●通報後は消防隊の到着を待つ

上記のポイントを意識して練習することで、実際の緊急時にも適切に対応できます。

避難訓練

避難訓練は、災害時に安全に避難する方法を身につけ、パニックを防ぐことが目的です。主な内容は以下の4つです。

【避難訓練の主な内容】

避難経路の確認
  • ●複数の経路を実際に歩いて確認
  • ●企業の場合、各担当者で事前に図面での図上訓練を行ってから、非常階段や避難はしごの使い方を学ぶ
  • ●誘導灯の確認
避難場所の確認
  • ●一時避難場所と広域避難場所の把握
  • ●実際に歩いて距離や時間を確認
避難時の注意点の確認
  • ●エレベーター使用禁止の徹底
  • ●煙を想定した低い姿勢での避難練習
  • ●防火扉やシャッターの操作方法の確認
避難完了後の点呼
  • ●迅速で正確な人員確認の方法を練習
  • ●安否確認システムがあれば使用方法も確認

避難訓練の効果を高めるコツは、さまざまな災害シナリオで訓練することです。また、要配慮者の支援方法も必ず確認しましょう。

初期消火訓練

初期消火訓練は、火災発生初期の段階で適切に消火活動を行うための訓練です。適切な消火活動で、被害を最小限に抑えることができます。訓練の主な内容は以下のとおりです。

【初期消火訓練の主な内容】

消火器の基本的な使い方
  • ●安全ピンを抜く
  • ●ホース先のノズルを持ち火元に向ける
  • ●レバーを強く握る
  • ●火元に向けて放射する
消火器の種類と性能の理解
  • ●粉末、二酸化炭素、強化液等各種消火器の特徴を学ぶ
屋内消火栓の使用方法
  • ●シミュレーションを行い、バルブ開放から放水までの操作手順を習得
安全な初期消火の留意点
  • ●火元から3~5メートルの距離を保つ
  • ●煙の吸入に注意
  • ●火災の種類に応じた適切な消火方法を学ぶ
  • ●避難経路を確保しながら消火

訓練の際は実際に消火器を使用し、模擬火災での状況判断も重要です。

応急手当訓練

応急手当訓練は、災害時に負傷者が発生した際に適切な対応ができるようにするための訓練です。応急手当は、救急車が到着するまでの間に行う手当てのことで、傷病者の救命効果を高め、症状の悪化を防ぐ上で重要です。訓練の主な内容には以下が含まれます。

【応急手当訓練の主な内容】

  • ●心肺蘇生法
  • ●AEDの使用方法
  • ●止血法
  • ●骨折や捻挫の処置
  • ●熱中症対策

特に心肺停止の場合、その場に居合わせた人による迅速かつ適切な応急手当が、救命率を大きく向上させます。

効果的な訓練のために、実践的なシミュレーションや専門家による指導を取り入れ、東京消防庁等の公的機関が提供する講習の活用も検討しましょう

また、訓練でも身の安全が第一であることを忘れずに行うことが大切です。

安否確認訓練

安否確認訓練は、災害時に従業員の状況を素早く把握するための訓練です。訓練の基本的な流れは以下のとおりです。

【安否確認訓練の基本的な流れ】

  • 1.自分の安全を確保する
  • 2.周囲の人の安全を確認する
  • 3.周辺の状況を把握する
  • 4.責任者に報告する

安否確認訓練には、使いやすいシステムを導入すると効果的です。例えば、関西電力の「ANPiS」は、直感的に操作ができるシンプルで使いやすい操作性が特徴です。気象庁と連携して常に気象情報を取得しているため、災害時には自動でメールを配信し、回答結果も自動で集計する機能があります。

ただし、操作がどれだけ簡単でも、慣れていないと戸惑ってしまうこともあるため、以下の流れでテスト配信を行うことをおすすめします。

  • 1.テスト配信の日時を決める
  • 2.全員が適切に応答できるか確認する
  • 3.応答時間や回答率を分析し、改善点を見つける
  • 4.結果に基づいてシステムの設定を見直す

システムを利用した安否確認訓練は企業単独でも実施しやすい訓練なので、定期的に行いましょう。

安否確認の方法については、以下の記事で詳しく紹介しています。

防災訓練の実施方法と流れ

防災訓練の実施方法と流れ

防災訓練を行う際は、適切な方法と手順を選ぶことが大切です。まず、訓練の種類を決めましょう。

防災訓練の種類 内容
展示型訓練 防災知識を展示や講演で学ぶ
実技型訓練 実際の行動で防災技能を習得
図上訓練 地図や図面で災害対応を検討

ここでは、実技型訓練の流れを紹介します。

【実技型訓練の基本的な流れ】

  • 1.訓練計画を立案する
  • 2.災害対策マニュアルを作成する
  • 3.訓練計画・テーマを決める
  • 4.従業員の役割分担を決める
  • 5.防災訓練の概要を従業員に周知する
  • 6.災害対策マニュアル・訓練計画に沿って防災訓練を実施する
  • 7.実施後は内容を振り返り、次の訓練や災害時に備える

それぞれの手順について詳しく解説します。

災害対策マニュアルを作成する

災害対策マニュアルは、防災訓練の骨組みとして事前に指針を決めておきましょう。作成手順は以下のとおりです。

組織体制と役割分担の決定
  • ●対策本部の設置基準と構成員を明確化
  • ●各部署・個人の役割を具体的に決める
情報収集体制の記載
  • ●情報収集担当者の指名
  • ●収集すべき情報の種類と優先順位の設定
緊急連絡網の作成
  • ●社内外の重要連絡先リスト
  • ●複数の連絡手段(電話、メール、SNS)
初期対応・避難の整理
  • ●避難経路と場所の明確化
  • ●初期消火や応急救護の手順

企業防災マニュアルに盛り込むべき主な内容は以下のとおりです。

  • ●災害時の役割明確化
  • ●備蓄品のリスト化
  • ●情報資産の保護方法
  • ●避難経路の確認
  • ●安否確認の方法

マニュアルは定期的に更新し、訓練結果や組織変更を反映させましょう。実際の災害経験も活かし、常に最新で実効性のある内容に保つことが重要です。

緊急連絡網については、以下の記事で詳しく紹介しています。

訓練計画・テーマを決める

防災訓練の計画とテーマ決定は、効果的な訓練の基礎となります。防災マニュアルを基に、目的と内容を明確にしましょう。

決めるべき主な内容は以下のとおりです。

  • ●目的:達成したい具体的な目標
  • ●実施日・スケジュール:日時と詳細な流れ
  • ●実施場所:訓練を行う具体的な場所や範囲
  • ●参加者:参加する従業員の範囲と役割
  • ●必要な備品:使用する機材や資材のリスト
  • ●関係団体との連携:消防署や自治体との協力体制
  • ●訓練後の流れ:振り返りや評価方法、報告書作成等

テーマや課題を明確にすることで、シナリオ作成がスムーズになります。以下のポイントを意識してシナリオを作成しましょう。

【訓練シナリオ作成のポイント】

  • ●想定する災害の種類と規模を決める
  • ●時系列に沿った具体的な状況を設定する
  • ●各参加者の役割と行動を明確にする
  • ●予想される課題や問題点を組み込む
  • ●評価ポイントを設定する

作ったシナリオは参加者に事前周知し、訓練後の改善も忘れずに行ってください。

従業員の役割分担を決める

実技型防災訓練を効果的に行うには、適切な役割分担が重要です。

役割 責任
統括指揮者
  • ●訓練全体の指揮・統括(企業の防火管理者・防災管理者がいる場合は統括)
  • ●最終的な判断
情報連絡班
  • ●情報収集・伝達
  • ●外部機関との連絡
避難誘導班
  • ●従業員の安全な避難誘導
  • ●避難経路の確保
装備品等準備班
  • ●必要な機材・備品の準備と管理
救護班
  • ●負傷者の応急処置
  • ●医療機関との連携
消火班
  • ●初期消火活動
  • ●消防設備の操作
安否確認班
  • ●従業員の安否確認
  • ●集計・報告

役割を明確にすることで、訓練や実際の災害時にスムーズに行動できます。また、以下の点に注意して役割分担を行いましょう。

  • ●役割の重複を避ける
  • ●リーダーと副リーダーを指名する
  • ●シフト制の場合は人数調整を行う
  • ●能力や経験を考慮して割り当てる
  • ●定期的に役割を見直す

防災訓練の概要を従業員に周知する

防災訓練の概要が決定したら、従業員全員に周知しましょう。参加漏れを防ぐため、朝礼や夕礼での口頭告知、全社メール配信等、複数の手段を用いて情報を伝達します。

特にシフト制を採用している企業では、当日の勤務状況を考慮し、全従業員が参加できるよう配慮が必要です。場合によっては複数回の訓練実施を検討するのも一案です。

また、オンラインで行う安否確認訓練やリモート防災訓練は、対面型の訓練に比べて参加の強制力が低くなりやすいです。そのため、訓練の重要性を強調し、積極的な参加を促すことが求められます。

防災意識を常に高く保つには、平常時からの定期的な教育や小規模訓練の実施が効果的です。年間計画を立て、防災教育を新入社員研修や定期研修に組み込む等、継続的に取り組みましょう。

災害対策マニュアル・訓練計画に沿って防災訓練を実施する

防災訓練を効果的に実施するには、事前に策定した災害対策マニュアルと訓練計画に沿って行うことが重要です。当日の進行をスムーズにするため、全体を統括するリーダーを事前に指名しておきましょう。

リーダーは訓練の全体像を把握し、参加者への適切な指示や想定外の状況への対応を行います。リーダー不在では、参加する従業員が混乱し、訓練の効果が大幅に低下するおそれがあります。

実施後は内容を振り返り、次の訓練や災害時に備える

防災訓練の実施後は、内容を詳細に振り返ることが重要です。

計画との整合性や目標達成度、参加者の理解度と行動の適切さ、想定外の事態への対応等を評価しましょう。良かった点は強化して次回の訓練でも継続させ、不備や課題は明確にして具体的な改善策を検討します。

振り返り内容をもとに災害対策マニュアルを更新すれば、次の訓練がより実効性の高いものになります。また、訓練の概要や結果、課題や改善策をまとめた報告書を作成し、組織全体で共有することで、防災意識の向上につなげましょう。

しかし、年に一度の訓練だけでは、いざという時に適切に行動することは難しいかもしれません。年間計画を策定し、さまざまな災害シナリオや訓練内容を組み込んだうえで、最低でも年2回以上の訓練実施を目指しましょう

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内容を理解して防災意識向上につながる防災訓練を実施しよう

防災訓練は企業が災害時に適切に対応し、従業員と企業資産を守るための重要な取り組みです。防災訓練は法的義務でもあり、企業は法令に従って訓練を実施し、従業員の安全確保に努める必要があります。

訓練を通じて、企業は防災計画や設備の有効性を確認し、災害時の適切な対応能力を向上させることができます。効果的な訓練実施のためには、目的や内容を明確にし、適切な役割分担や現実的な訓練シナリオの作成が重要です。

また、防災訓練は一度きりのイベントではなく、定期的に実施し、その都度訓練結果をもとにマニュアルや対応策の見直しを行うことが大切です。

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三沢 おりえ(みさわ おりえ)

監修者 三沢 おりえ(みさわ おりえ)

総合危機管理アドバイザー
防犯・防災、護身術の講演会やセミナー、イベント、メディア対応等幅広く活動。日本一非常食を食べていると自負する非常食マイスターでもある。総合防犯設備士、危機管理士、防災士。

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