リスクマネジメントとは?考え方・重要性やリスクの種類とプロセスを簡単に解説
2025.1.9
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目次
リスクの管理は、万が一予測される事態が発生した際に損害を抑え、事業を継続的に行ううえで欠かせない要素です。リスクの管理は「リスクマネジメント」と呼ばれます。自然災害が多い日本では、地震や洪水に備えたリスク管理が特に重要です。
この記事では、リスクマネジメントの概要や基本的な考え方、具体的なリスクの種類、リスクマネジメントのプロセスを紹介します。リスクマネジメントを効率的に行うために有効なシステム・ツールも紹介するので、リスクに備えた企業運営を考えている方はぜひ参考にしてください。
リスクマネジメントとは?
リスクマネジメントとは、リスクの管理を意味する言葉です。リスクとは、危険性や危険度等の意味合いで使用される言葉ですが、厳密には被害が発生する可能性をさします。
リスクマネジメントは、さまざまな業種や場面で使われます。例えば、企業活動のリスクマネジメントだけでも、投資に関わるリスクや災害に対するリスク、コンプライアンスに関するリスク等の分野で使用されます。
リスクマネジメントとリスクヘッジの違い
リスクヘッジとは、リスクを回避するための備えをさします。リスクマネジメントはリスクに対する対策や管理体制、プロセス全体をさすため、リスクヘッジより広い意味で使用される言葉です。
また、リスクヘッジは比較的投資や金融リスクに対して使われる傾向にあります。
リスクコントロールとリスクファイナンシングとの違い
リスクコントロールとは、損失の発生頻度や大きさを削減する方法を指します。一方、リスクファイナンシングは、発生した損失を補填する金銭的な対策を意味する言葉です。
リスクに備えて保険に加入し、損失の補填を受ける方法や、リスクに備えて自己資金を保有し、補填する方法がリスクファイナンシングにあたります。それぞれはリスクマネジメントを行ううえで検討されるリスクへの対応策です。
リスクマネジメントの重要性と現状
社会環境の急速な変化により、リスクマネジメントの重要性は高まっています。例えば、一般財団法人リスクマネジメント協会では、10年前には着目されていなかったリスクに以下のものを挙げています。
- ●規制緩和
- ●グローバル化
- ●社会的責任の要請
- ●情報技術の革新
- ●メインバンク制度の崩壊
- ●雇用形態の変化
- ●気象の変化
- ●法的要請
リスクマネジメントは、企業存続や事業継続に重要な役割を果たします。しかし、リスクマネジメントを担当する部署がない企業や、専門部署がない企業も多いのが現状です。中小企業庁の調査で公表されている、大企業と中小企業のリスクマネジメント体制に関するデータは下記のとおりです。
回答内容 | 回答割合 | |
---|---|---|
大企業 (n=335) |
中小企業 (n=3,246) |
|
リスク管理を担当する専門部署がある | 18.5% | 3.9% |
リスク管理は総務・企画部門等が兼務している | 66.9% | 55.7% |
担当部署なし | 14.6% | 40.4% |
上記のとおり、リスクマネジメントに関する専門的な部署がある企業は大企業でも2割以下、中小企業では1割以下です。中小企業では4割以上の企業がリスクマネジメントに関する担当部署がありません。
日本はもともと自然災害が多い国ですが、近年ではより一層自然災害による被害が増しています。集中豪雨によって降水量が200mm以上となる年間の日数は、1901年から1930年と比べて、1990年から2019年の30年間で1.7倍に増加している他、大規模地震のリスクも高まっていると言われています。リスクマネジメントの重要性は高まっている反面、体制が整っていない企業も多いというのが現状です。
リスクマネジメントをはじめとする災害に対する備えは、企業の存続を守るだけではありません。取引先に対する安全性のアピールになり、企業価値を高めることにもつながります。災害が増加している日本では、企業が事業継続能力を重要視して取引先を選定する傾向が、今後より一層 強くなることも考えられるでしょう。
事業継続能力を社外にアピールするうえでも、リスクマネジメント体制を整えておくことは大切です。
リスクマネジメントで想定されるリスクの主な種類
リスクマネジメントで想定されるリスクの種類には、以下のものが挙げられます。
- ●製品事故による賠償責任リスク
- ●社会情勢の変化や法的規制の変更に関わるリスク
- ●脆弱なセキュリティによる情報漏洩リスク
- ●台風や大雨、大規模地震による自然災害のリスク
それぞれの内容を以降で詳しく紹介します。
製品事故による賠償責任リスク
製品の不具合や設計ミスによって、事故が発生する可能性があります。企業は消費者に対する損害賠償責任を負うリスクがあり、事故の内容によっては多額の賠償金が発生することも考えられます。
例えば、自動車メーカーがブレーキシステムの欠陥により事故を引き起こした場合、人命に関わる事故が発生すると企業への影響は甚大です。賠償責任リスクは、企業の信頼力喪失にもつながり、消費者からの信頼を失うと、売上の減少や市場競争力の低下をまねく可能性もあります。
社会情勢の変化や法的規制の変更に関わるリスク
社会情勢の変化や新たな法的規制の導入によって、自社のビジネスモデルや運営が影響を受けるリスクが存在します。
例えば、環境規制の強化や品質管理基準の見直しが行われると、企業は対応するために追加コストを負担しなければなりません。規制を無視すると、罰金や制裁が科される可能性があるほか、信用の低下にもつながります。
運用コストの増加は事業の継続性を脅かす要因になるかもしれません。
脆弱なセキュリティによる情報漏洩リスク
セキュリティに脆弱性があると、顧客情報や機密データが不正アクセスやランサムウェアによって漏洩するリスクが高まります。情報流出は企業の信用失墜を招くだけでなく、法的措置を受けたり、巨額の賠償請求をされたりするリスクもあるため注意が必要です。
再発防止のための追加的なコストや、顧客からの信頼回復に向けたマーケティング戦略も必要になる等、企業の運営に大きな影響を及ぼすことが考えられます。
台風や大雨、大規模地震による自然災害のリスク
台風や大雨、大規模地震等の自然災害によって企業の施設やインフラが破壊され、事業継続が困難になるリスクがあります。事業継続が困難になると想定するリスクに関するアンケート調査によると、リスクの内容として「自然災害」と答えた企業の割合は大企業で約8割、中小企業では7割以上です。
回答内容 | 回答の割合 (複数回答可) |
|
---|---|---|
大企業 (n=328) |
中小企業 (n=3,188) |
|
自然災害 | 89.2% | 75.9% |
情報セキュリティ上のリスク | 89.5% | 75.0% |
設備の故障 | 86.5% | 83.1% |
火災・爆発事故 | 80.3% | 73.3% |
自社業務管理システムの不具合・故障 | 81.5% | 69.7% |
取引先の倒産 | 68.5% | 67.1% |
感染症 | 76.7% | 59.9% |
製品事故 | 52.8% | 58.1% |
日本国内での物流の混乱 | 36.0% | 35.2% |
環境破壊 | 31.6% | 26.8% |
海外での戦争、テロ、自然災害等 | 25.5% | 18.5% |
自然災害の発生件数 や被害額は年によってばらつきがあるものの、傾向として年々増加しています。降水量の増加や平均気温の上昇等の気候変動に加え、大規模地震の発生リスクも高まっているため、企業が自然災害に対してリスクマネジメントを行う重要性は増しています。
内閣府では日本が自然災害の多い国であることを踏まえ、BCP(事業継続計画)の作成を推奨し、ガイドラインを提供しています。自然災害は特に企業が備えるべきリスクのひとつです。
リスクマネジメントの主なプロセス
リスクマネジメントのプロセスは下記のとおりです。
プロセス | 概要 |
---|---|
1.コミュニケーションおよび協議 | 組織内外のステークホルダーとの意見交換や意思疎通を行い、リスクへの理解を共有する ステークホルダーの期待や関心を明確にし、意思決定に反映させる |
2.組織の状況の確定 | 組織が置かれている環境や状況を整理し、リスクマネジメントの適用範囲とリスクの重要度を判断する基準を設定する |
3.リスクの特定 | リスクを洗い出し、どのようなリスクが発生する可能性があるかを明確にする 部門の関係者がリスク分析シートやブレーンストーミングを用いて、リスクを総合的に抽出し、偏りなくリスクを把握する |
4.リスク分析 | リスクの影響度と発生確率を評価し、リスクの大きさを算出する 影響は単に金銭的な損失だけでなく、人命や企業の評判にも及ぶため、包括的な視点で分析する |
5.リスクの評価 | 特定されたリスクに優先順位を付け、重要なものを絞り込む リスクマトリックスを使用してリスクを視覚化することで、優先すべきリスクが明確になる |
6.リスク対応 | リスク対応は、損害を防止・軽減する「リスクコントロール」と、損害発生後の資金準備を行う「リスクファイナンシング」に分けられる 双方の手法を組み合わせ、事前に損害を予防する |
7.モニタリングおよびレビュー | リスクマネジメントの活動が実施されているか、目標が達成されているかを継続的に確認する 定期的にプロセスを評価し、改善を行う |
リスクマネジメントに関する国際規格には「ISO31000:2009」があります。標準化された国際規格のガイドラインに沿ってリスクマネジメントを行うと、取引先との意思疎通が図りやすく、国際競争力の強化にもつながるため、リスクマネジメントを行う際には国際規格を参考にするとよいでしょう。
リスクマネジメントにおけるリスクへの対応策
リスクへの対策は、大きく分けて「リスクコントロール」と「リスクファイナンシング」の2つに分けられます。前述のとおり、リスクコントロールは損失の発生頻度と大きさを減少させる方法です。一方、リスクファイナンシングは損失を補填するための金銭的手当てを指します。
それぞれの手段と大まかな内容は以下のとおりです。
区分 | 手段 | 内容 |
---|---|---|
リスクコントロール | 回避 | リスクを伴う活動自体を中止し、予想されるリスクを遮断する対策 リターンの放棄を伴う |
損失防止 | 損失発生を未然に防止するための対策や予防措置を講じ、発生頻度を軽減する | |
損失削減 | 事故が発生した際の損失の拡大を防止または軽減し、損失規模を抑えるための対策 | |
分離・分散 | リスクを一ヶ所に集中させず、分離・分散させる対策 | |
リスクファイナンシング | 移転 | 保険、契約等により損失発生時に第三者から損失補填を受ける方法 |
保有 | 対策を講じず、損失を自己負担する方法 |
対策の実施後には残留リスクが容認できる水準にあるかを評価し、必要に応じて見直しましょう。改善により対策のブラッシュアップが可能です。
なお、リスクマネジメントは組織全体で取り組むべきですが、すべてのリスクに完璧に対応することはできません。経営に大きな影響を与えるリスクに重点を置くことが重要であり、経営者のリーダーシップのもと、従業員が目標を共有して協力することが大切です。
リスクマネジメントのひとつであるBCP策定の重要性
BCPは企業がリスクマネジメントを行ううえで重要な要素のひとつです。BCP(Business Continuity Plan)とは、企業や組織が大規模地震や洪水、事故、テロ等の災害・緊急事態が発生した際、事業を継続するための計画や対策のことです。
リスクマネジメントはさまざまなリスクに対して管理・対策するものである一方、BCPは災害・緊急事態から自社を守り、損害を最小限に抑えるための対策である点で異なります。しかし、広義の意味ではどちらもリスクマネジメントです。
自然災害が多い日本では、BCPの策定も欠かせません。BCPは国や地方公共団体、各業種に関連する団体からも策定が推進されており、ガイドラインが提供されています。BCPの重要性が高まっている昨今、サプライヤーの事業継続能力を重視する大企業は、BCP策定の有無を取引選定基準にすることも十分に考えられます。
企業の安全管理に携わり、リスクマネジメントの推進を検討しているなら、BCPの策定も検討しましょう。リスクマネジメントとBCPは相互に関連があるため、組織のリスク管理能力向上につながります。
災害対策に有効なBCPについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:災害時に役立つBCP(事業継続計画)とは?具体的な効果や策定のポイントを紹介
リスクマネジメントやBCPに効果的なシステム・ツール
リスクマネジメントやBCP策定をすべて自社で行おうとすると、リソースが不足する可能性があります。必要に応じて災害・緊急時の安全対策に活用できるシステム・ツールを導入しましょう。効果的なシステム・ツールの一例は以下のとおりです。
- ●データのバックアップツール
- ●グループウェア
- ●安否確認システム
それぞれの詳細を以降で紹介します。
データのバックアップツール
災害への備えとしてデータのバックアップツールは不可欠です。デジタル化が進む昨今、災害によってシステム障害が起こった際はデータ復旧の速度が重要となります。
パックアップツールは重要なデータを安全に保存し、システム障害や自然災害によるデータ損失から企業を守ります。特にクラウドベースのバックアップサービスは物理的な災害に対しても強く、迅速なデータ復旧に適しています。
グループウェア
グループウェアとは、業務効率化や社内コミュニケーションの円滑化を図れるソフトウェアです。導入すれば社内や部署内で情報の共有や共同作業ができます。緊急時には迅速な情報伝達が求められるため、グループウェアを活用すると、組織全体で連携しやすくなるでしょう。
テレワーク環境での社内コミュニケーションにも応用できるため、災害時・緊急時だけではなく通常業務にも役立ちます。
安否確認システム
自然災害の際に優先するべき業務のひとつが従業員の安否確認です。安否確認の手段にはメールやSNSの他、安否確認システムがあります。しかし、従業員からメールアドレスやSNSアカウントを集めて管理し、手動で安否確認メールを送信するのは個人情報漏洩リスクがあるほか、労力もかかるため、効率はよくありません。
一方、企業向けの安否確認システムは、メールの自動配信をはじめとするさまざまな機能が利用でき、業務の効率化に役立ちます。企業向け安否確認システムで利用できる主な機能は以下のとおりです。
- ●気象情報と連携した自動一斉配信設定
- ●部署や所属単位に分けた配信設定
- ●従業員とその家族の安否登録
- ●回答結果の自動集計
東京商工会議所によると、全体の32%以上の企業が有料の安否確認システムを導入しています※。
安否確認システムは提供元によって使える機能やコストが異なるため、自社にとって最適なシステムを選ぶことが大切です。
安否確認システムについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:安否確認システムとは?主な機能や導入メリットを紹介
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ご利用人数 | スタンダードプラン※1 | ファミリープラン※2 |
---|---|---|
~50名 | 6,600円 | 6,985円 |
~100名 | 9,900円 | 10,670円 |
~150名 | 13,200円 | 14,355円 |
~200名 | 15,400円 | 16,940円 |
~300名 | 17,600円 | 19,910円 |
~400名 | 19,800円 | 22,880円 |
~500名 | 22,000円 | 25,850円 |
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リスクマネジメントを徹底してさまざまなリスクに備えよう
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監修者 三沢 おりえ(みさわ おりえ)
総合危機管理アドバイザー
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