危機管理とは?目的やリスク管理との違い、BCPとの関係や具体的な取り組みを解説
2025.1.9
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目次
社会情勢の変化や自然災害への備えとして「危機管理(クライシスマネジメント)」は重要な要素のひとつです。特に自然災害の多い日本で、企業は地震や台風、大雨等を踏まえた危機管理が欠かせません。
この記事では、危機管理の具体的な内容やリスク管理との目的の違い、事業継続計画(BCP)との関係を詳しく紹介します。企業が取るべき具体的な危機管理の取り組みやプロセスも紹介するので、災害や緊急事態に備えて危機管理に着手する場合はぜひ参考にしてください。
「危機管理」とは不測の事態への対策を構築すること
危機管理とは、被害を最小限に食い止めるための、予期せぬ事態への対策を指し、「クライシスマネジメント」とも呼ばれます 。クライシスマネジメントの対象になる危機の一例 は以下のとおりです。
- ●自然災害(地震、津波、洪水、台風、噴火等)
- ●原発事故
- ●交通機関事故
- ●テロ攻撃
- ●システム障害(サイバー攻撃・システム障害)
- ●戦争
- ●犯罪
リスクの影響度や発生確率を評価し、対策すべきリスクの優先順位を付ける等、事前に対策を行うプロセスが危機管理です。
危機管理(クライシスマネジメント)の目的
危機管理の目的は、緊急事態や災害が発生した際の被害を最小限にするため、迅速に対処することです。被害を最小限に抑える点は同じですが、具体的な目的は業種によって異なります。
例えば、民間企業の場合は損害を最小限に抑え、事業を迅速に復旧することが危機管理の主な目的です。
一方、例えば学校では、子どもや教員の生命を守ること、保護者や地域社会からの信用・信頼を守ること等が主な目的とされています。
危機管理とリスク管理の違い
リスク管理(リスクマネジメント)とは、リスクを管理し、損失の回避や低減を図るプロセスを指します。危機管理はリスク管理を含む概念です。危機管理とリスク管理は厳密には異なる概念ですが、使い分けは曖昧です。
一般的には、危機が起こらないよう事前に対策する活動は「リスク管理(もしくはリスクマネジメント)」と呼ばれ、危機が発生したあとの活動は「危機管理(もしくはクライシスマネジメント)」と呼ばれます。
危機管理とBCP・BCM・CMPの違い
企業の場合、危機管理の一環としてBCPの策定やBCMも重要視されています。BCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)とBCM(Business Continuity Management、事業継続管理)は、どちらも緊急時に事業を継続させるために策定するものです。BCPを継続的に運用していく活動や管理の仕組みをBCMと呼びます。中小企業庁によると、BCPの定義は以下のとおりです※。
一方、CMP(Crisis Management Plan)は「危機管理計画」と呼ばれる、組織が潜在的な危機に備え、迅速な対応を可能にするための包括的な計画です。危機管理とBCP・BCM・CMPそれぞれの概要や目的を簡潔にまとめると以下のとおりです。
用語 | 概要 | 策定の目的 |
---|---|---|
危機管理(クライシスマネジメント) | 組織に大きな影響を及ぼすおそれのある予期せぬ事態への対策を行うプロセス | 緊急事態や災害が発生した際に、被害を最小限にするため、迅速に対処すること |
BCP(事業継続計画) | 災害時・緊急時に事業を継続・復旧する方法や手段を取り決めておく計画 | 災害時・緊急時等予期しない事態が発生した際に中核事業の継続もしくは早期復旧を可能にし、損害を最小限に抑えること |
BCM(事業継続管理) | BCPを継続的に運用していく活動や管理の仕組み | BCPの実行を含みつつ、リスク管理と業務継続の全体的な枠組みを構築・維持すること |
CMP(危機管理計画) | 組織が潜在的な危機に備え、迅速な対応を可能にするための包括的な計画 | 危機発生に対する初期対応や二次被害を回避すること |
特にCMPとBCPは混同されやすい用語です。CMPが「さまざまな危機への対応」に焦点を当てているのに対し、BCPは「事業の継続」に焦点を当てて危機への対策を講じる点で異なります。
関連記事:災害時に役立つBCP(事業継続計画)とは?具体的な効果や策定のポイントを紹介
関連記事:BCPとBCMの違いとは?重要性や策定手順と運用時の注意点を解説
危機管理やBCP策定の重要性
危機管理とBCPは、どちらも災害や緊急事態に備えるうえで企業にとって重要なプロセスです。特にBCPは危機管理を含みつつ、災害時・緊急時に備えて策定するものであり、災害・緊急事態が発生した際の行動指針になります。そのため、危機管理はBCPの一部に位置づけられています。
また、BCMはBCPを継続的に運用していく活動や管理を行うことを指すため、BCPを策定していることが前提です。つまり、BCPの策定は危機管理を行うことにもつながり、BCMを運用していくうえでも重要な役割を果たします。
特に日本は世界的にみても自然災害が多い国です。近年では大規模地震のリスクも高まっていると注意喚起がなされています。災害発生後の対策として危機管理は重要です。企業ならば、事業復旧をスムーズに行うために、事前のBCP策定が求められます。
BCPは国や地方公共団体、各業種に関連する団体からも策定が推進されており、ガイドラインが提供されています。BCP策定の際には、自社の業種にあったガイドラインを活用して策定を進めると良いでしょう。
危機管理やBCPの現状
危機管理やBCPの重要性は高いものの、自然災害をはじめとする危機に対し、万全に備えている企業は多くありません。中小企業庁の調査によると、自然災害に対する対応は大企業・中小企業の半数以上が「あまり対応を進めていない」、「ほとんど対応を進めていない」と回答しています。
自然災害に対する対応状況 | 大企業(%) | 中小企業(%) |
---|---|---|
十分に対応を進めている | 1.6 | 0.6 |
ある程度対策を進めている | 39.4 | 23.0 |
あまり対応を進めていない | 40.3 | 46.2 |
ほとんど対応を進めていない | 12.4 | 23.7 |
分からない | 6.4 | 6.5 |
BCPの策定も、地方公共団体では100%であるのに対し、民間企業では大企業で約6割、中小企業で約3割と策定が進んでいません。未策定の主な理由は以下のとおりです。
未策定理由上位5つ ※複数回答可、()内は回答割合 | |
---|---|
大企業 | 中小企業 |
法令、規制等の要請がない(43.1%) | 策定に必要なスキル・ノウハウがない(57.7%) |
策定に必要なスキル・ノウハウがない(43.0%) | 策定する人手を確保できない(44.4%) |
策定の効果が期待できない(34.2%) | 法令、規制等の要請がない(35.6%) |
代替オフィス等の対策経費が確保できない(24.0%) | 代替オフィス等の対策経費が確保できない(28.6%) |
策定の費用が確保できない(23.3%) | 策定の効果が期待できない(22.3%) |
上記データのとおり、危機管理やBCP策定が重要視される反面、策定に必要なノウハウ・スキルや人員の不足等の理由によって、万全に備えられない企業も多いのが現状です。
危機管理によって得られる具体的な効果
危機管理によって得られる具体的な効果は以下のとおりです。
- ●従業員の安全確保につながる
- ●情報漏洩を未然に防げる
- ●損害を最小限に抑えられる
- ●社会的な信用や企業価値の向上につながる
それぞれ以降で詳しく紹介します。
従業員の安全確保につながる
危機管理により予期せぬ災害や緊急事態に備えることは、従業員の安全確保にもつながります。例えば、水や食料の備蓄、安否確認システムの導入は、従業員の安全確保に貢献するでしょう。
また、危機管理がしっかりと整備されている企業では、従業員も安心感を持って働けるため、労働意欲の向上にもつながります。
情報漏洩を未然に防げる
危機管理は、機密情報や重要データの漏洩を防ぐ役割もあります。例えば、システム障害やサイバー攻撃は危機管理の対象となる事象のひとつです。
情報の取り扱いを厳格に管理し、セキュリティ対策を万全にすれば、外部の脅威からデータを守れます。情報漏洩による損害を未然に防ぐことで、顧客やビジネスパートナーからの信頼を維持でき、企業のブランドイメージを守れます。
損害を最小限に抑えられる
危機管理により予期せぬ事態の発生に備えておけば、万が一の時でも損害を最小限に抑えられます。危機管理には、事前のリスク評価や対応手順が含まれており、事後でも迅速な復旧や修復が可能です。
例えば、自然災害やシステム障害が発生した場合でも、迅速に計画に基づいた行動をとることで、金銭的な損失も軽減でき、業務の継続性を確保できます。
社会的な信用や企業価値の向上につながる
危機管理は、企業の社会的な信用を高め、ブランド価値を向上させる要因にもなります。顧客や取引先に対して、危機に対する明確な対応策を示せれば、信頼を獲得できるでしょう。
特に、企業の規模が大きくなると、サプライヤーやパートナーの事業継続能力を重要視することも多いため、危機管理やBCPの策定が取引先の選定基準となるケースが出てきています。日本では自然災害のリスクが高いため、今後さらに危機管理やBCP策定の有無を考慮して取引先を決める企業が増加していくことも十分に考えられるでしょう。
危機管理(クライシスマネジメント)のプロセス
危機管理は、リスクの特定や評価の段階である「リスクマネジメント」を行っていることが前提です。プロセスや具体的な内容は業種によって異なります。一例として、教育機関の危機管理プロセスを紹介すると以下のとおりです。
段階 | 内容 | |
---|---|---|
リスクマネジメント | 未然防止(平常時の対応) |
|
クライシスマネジメント | 緊急時の初動・初期対応 |
|
緊急時の中・長期対応 |
|
リスクマネジメントでは、過去の事例を分析し、危機の発生前兆を明らかにします。リスクマネジメントは主に災害が起こる前に、未然の防止策として行うものです。一方、クライシスマネジメントは災害や緊急事態が発生した際の対応策に関する取り組みを行います。
危機管理対策の取り組みの具体例
危機管理対策の取り組みの具体例には、以下の内容が挙げられます。
- ●災害時・緊急時のマニュアル作成
- ●エスカレーションルールの策定
- ●定期的・継続的な訓練と改善
- ●危機管理や業務効率化に役立つシステムの導入
それぞれ以降で詳しく紹介します。
災害時・緊急時のマニュアル作成
災害時や緊急時に備えた具体的なマニュアルを作成することは、危機管理の基盤となり効果的に機能します。各種緊急事態に対する対応手順、連絡先リスト、避難経路、役割分担等がその一例です。
例えば文部科学省では、児童生徒等を守るため、学校保健安全法に基づき危機管理マニュアルの作成が義務付けられています。一方、一般企業には危機管理のマニュアル作成の義務は特にありません。そのため、企業は自主的に災害・緊急時に備えたマニュアルの作成に取り組むことが大切です。
また、BCP(事業継続計画)のガイドラインは、各業種の公的機関や関連団体から提供されています。参考にすることで、自社の事業継続に重要なリスクの洗い出しや対応策の検討、行動計画等の策定が可能です。
エスカレーションルールの策定
危機が発生した際の情報の流れや責任の所在を明確にするためには、エスカレーションルールの策定が有効です。エスカレーションルールとは、問題や状況が特定の基準を超えた場合、どの役職まで報告するか、誰が責任者となるか等、明確な手続きや基準を定めたルールを指します。具体的には以下の形に分類し、エスカレーションルールを設定します。
レベル | 有事の程度 | 該当する有事の例 | 責任者 |
---|---|---|---|
レベルA | 経営上の影響が大きく、全社を挙げての対応が必要 | 大規模災害、火災、テロ、大規模リコール等 | 社長 |
レベルB | レベルAほどの影響はないが、複数部門での対応が必要 | 中規模の事故、大規模クレーム、特許係争、得意先の倒産等 | 主管部門担当取締役 |
レベルC | 影響度が小さく、主管部門の対応で解決可能 | 小規模な火災・事故、事務ミス等 | 主管部門 |
エスカレーションルールの策定により、問題が発生した際に誰に報告し、どのように対応すべきかが明確になるため、迅速な意思決定が可能になります。また、ルールを文書化して全員に周知徹底すると、危機対応の一貫性と効率性が向上するでしょう。
定期的・継続的な訓練と改善
危機管理対策は策定して終わりではありません。定期的な訓練やシミュレーションを行い、実際に発生した際に機能するかを確認することが大切です。定期的な訓練は従業員の理解度やスキル向上にもつながります。
訓練後は現状の問題点や改善点を洗い出し、マニュアルやプロセスの継続的な改善に役立てましょう。
危機管理や業務効率化に役立つシステムの導入
危機管理に関わる業務をすべて人力で行うと人的リソースが不足します。災害時・緊急時に人的リソースを適切に活用できるよう、業務効率化に役立つシステムの導入も検討しましょう。
例えば、自然災害の際には従業員の安否確認が最優先事項のひとつです。しかし、連絡先管理やメール送信を個別に行うと、業務の負担は大きくなり、事業継続や早期復旧に必要な中枢業務へリソースを割けなくなるでしょう。災害時に有効なシステムのひとつが安否確認システムです。
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関連記事:安否確認システムとは?主な機能や導入メリットを紹介
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監修者 三沢 おりえ(みさわ おりえ)
総合危機管理アドバイザー
防犯・防災、護身術の講演会やセミナー、イベント、メディア対応等幅広く活動。日本一非常食を食べていると自負する非常食マイスターでもある。総合防犯設備士、危機管理士、防災士。
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