防火管理者とは?仕事内容や資格取得の要件・講習について解説
2025.1.23
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目次
防火管理者は一定規模以上の建物・テナントで選任が必要です。消防法で定められており、従わない場合は罰則が設けられているため注意しましょう。
この記事では、防火管理者の概要や資格の種類、選任が必要な防火対象物の区分、資格取得の方法等を紹介します。企業が火災や災害への備えとして取り組むべき対策もあわせて紹介するので、参考にしてください。
防火管理者とは?
防火管理者とは、消防法に基づいて、防火管理に関する責任を担う人を指します。一定規模以上の建物や事業所では、火災予防や消火活動の準備、避難誘導等を適切に行うため、専任の防火管理者を設置しなければなりません。
消防法第8条では、対象物の管理権原者が有資格者のなかから防火管理者を選任し、防火管理上必要な業務を行わせなければならない、と明記されています。
防火管理者の仕事内容
消防法に記載されている防火管理者の業務は以下のとおりです。
- ●当該防火対象物について消防計画の作成
- ●当該消防計画に基づく消火、通報および避難の訓練の実施
- ●消防の用に供する設備、消防用水または消火活動上必要な施設の点検および整備
- ●火気の使用または取り扱いに関する監督
- ●避難または防火上必要な構造および設備の維持管理ならびに収容人員の管理
- ●その他防火管理上必要な業務
- ※出典:e-Gov 法令検索 「消防法」
防火管理者と防災管理者の違い
防災管理者は、企業や施設で、火災以外の災害(地震や毒性物質の発散等を原因とする災害)発生時に備え、防災対策を計画・実施する責任を持つ人を指します。
防火管理者は 「火災による被害の防止・軽減」を担い、防災管理者は 「地震等の火災以外の災害による被害の軽減」 を担う点で異なります。
防災管理対象物の管理権限者は、有資格者のなかから防災管理者を選任し、防災管理業務を行わせなければなりません。なお、防火管理業務と一体的に業務を行うことから、防災管理対象物では、防災管理者と防火管理者は同一の人を選任します。
防火管理者の選任義務がある場合|特定防火対象物・非特定防火対象物
消防法第8条1項または消防法施行令第1条の2、3項では、「防火管理者を選任しなければならない対象物は、収容人数(その防火対象物に出入りし、勤務し、または居住する者の数)によって決まる」 とされています。
対象物は大きく分けて以下の2つです。
- ●特定防火対象物
- ●非特定防火対象物
具体例を挙げて、それぞれの概要を紹介します。
特定防火対象物
特定防火対象物とは、不特定多数が利用する施設や、火災発生時に利用者の避難が難しく人命に及ぼす危険が高い施設等を指します。特定防火対象物かつ収容人数30人以上(入所型の老人ホームや乳児院等では10人以上)の施設が、防火管理者選任義務の対象です。
特定防火対象物の例には以下の施設が挙げられます。
- ●映画館
- ●百貨店
- ●ホテル
- ●旅館
- ●地下街
- ●病院
- ●社会福祉施設
- ●幼稚園 等
非特定防火対象物
非特定防火対象物とは、防火対象物のうち特定防火対象物以外の建物・施設を指します。非特定防火対象物かつ収容人数50人以上の施設が、防火管理者選任義務の対象です。
非特定防火対象物の例には以下の施設が挙げられます。
- ●学校
- ●図書館、博物館、美術館
- ●公衆浴場
- ●神社、教会
- ●工場または作業場
- ●倉庫 等
防火管理者の資格区分|甲種防火管理者・乙種防火管理者
防火管理者を選任する際は、防火対象物の規模に応じて「甲種防火管理者」と「乙種防火管理者」のいずれかに分けられます。
各防火対象物に選任できる防火管理者の資格も「甲種」と「乙種」に分けられているため、資格取得前には防火管理者を選任する建物がどちらに該当するか判断し、必要な資格を取得することが大切です。
なお、甲種は乙種よりも大規模な防火対象物の防火管理を担当できます。そのため、甲種資格を持っていれば、乙種資格が必要な防火対象物でも防火管理者としての選任が可能です。
甲種防火管理者と乙種防火管理者を判断する手順
甲種防火管理者と乙種防火管理者、どちらの選任が必要かは、建物やテナントの用途、延べ床面積、収容人数から判断します。
甲種防火管理者はすべての防火対象物で防火管理者になれますが、乙種防火管理者は小規模な防火対象物に限定されるので注意しましょう。乙種防火管理者を選任できる防火対象物等の条件は以下のとおりです。
- 1.自力避難困難者が入所する社会福祉施設等以外の特定防火対象物で、収容人員が30人以上かつ延床面積300平方メートル未満のもの
- 2.非特定防火対象物で、収容人員が50人以上かつ延床面積500平方メートル未満のもの
- 3.1と2のテナント
- 4.自力避難困難者が入所する社会福祉施設等で収容人員が10人以上の特定防火対象物、もしくはそれ以外で収容人員が30人以上かつ延床面積300平方メートル以上の特定防火対象物のテナントで、用途が自力避難困難者の入所する社会福祉施設等で収容人員10人未満であるもの
- 5.自力避難困難者が入所する社会福祉施設等で収容人員が10人以上の特定防火対象物、もしくはそれ以外で収容人員が30人以上かつ延床面積300平方メートル以上の特定防火対象物の、上記4以外のテナントで、収容人員30人未満であるもの
- 6.収容人員が50人以上かつ延床面積500平方メートル以上の非特定防火対象物のテナントで、当該テナントの収容人員が50人未満のもの
- ※出典:千葉県 「防火管理者について」
防火対象物で防火管理者の資格区分を判断する際には、以下の表を参考にしてください。
防火対象物の用途 | 特定防火対象物 | 非特定防火対象物 | |||
---|---|---|---|---|---|
自力避難困難者が入所する社会福祉施設等 | 左記以外 | ||||
防火対象物全体の延床面積と収容人数 | 10人以上 | 30人以上 | 50人以上 | ||
300㎡以上 | 300㎡未満 | 500㎡以上 | 500㎡未満 | ||
防火対象物の区分 | 甲種防火管理者 | 乙種防火管理者 | 甲種防火管理者 | 乙種防火管理者 | |
防火管理者の区分 | 甲種防火管理者 | 甲種防火管理者 | 甲種または乙種防火管理者 |
複合施設やオフィスビルのテナントの場合、以下の表を参考にして資格区分を判断できます。
防火対象物の区分 | 甲種防火対象物のテナント | 乙種防火対象物のテナント | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
テナント部分の用途 | 特定用途 | 非特定用途 | |||||
自力避難困難者が入所する社会福祉施設等 | 左記以外 | ||||||
テナントの収容人数 | 10人以上 | 10人未満 | 30人以上 | 30人未満 | 50人以上 | 50人未満 | |
防火管理者の資格区分 | 甲種防火管理者 | 甲種または乙種防火管理者 | 甲種防火管理者 | 甲種または乙種防火管理者 | 甲種防火管理者 | 甲種または乙種防火管理者 |
防火管理者になるには?
続いて、防火管理者になるための要件や講習について紹介します。
- ●防火管理者の要件
- ●防火管理講習の時間・内容・受講料
- ●防火管理者資格の有効期限と再講習
資格の取得を考えている方は参考にしてください。
防火管理者の要件
防火管理者に選任されるための要件は以下のとおりです。
- 1.防火管理業務を適切に遂行できる 「管理的、監督的地位」 にあること
- 2.防火管理上必要な 「知識・技能」 を有していること(防火管理講習修了者、学識経験者等)
「知識・技能」 は、一般的に防火管理講習の課程を修了することで満たせる要件です。以下に該当する場合は、知識・技能を有する(学識経験者等)と認められます。
- ●市町村の消防職員で管理的または監督的な職に1年以上あった者
- ●安全管理者として選任された者
- ●防火対象物点検資格者講習を修了し、免状の交付を受けている者
- ●危険物保安監督者として選任された者で、甲種危険物取扱者免状の交付を受けている者
- ●保安管理者または保安統括者として選任された者
- ●国もしくは都道府県の消防の事務に従事する職員で、1年以上管理的または監督的な職にあった者
- ●警察官またはこれに準ずる警察職員で、3年以上管理的または監督的な職にあった者
- ●建築主事または一級建築士の資格を有する者で、1年以上防火管理の実務経験を有する者
- ●市町村の消防団員で、3年以上管理的または監督的な職にあった者
上記の学識経験を証明する際には、各種証明書類の提出が必要になります。必要書類については管轄の消防本部・消防署に問い合わせて確認してください。
防火管理講習の時間・内容・受講料
防火管理講習は、各都道府県の消防署や一般財団法人日本防火・防災協会が実施しており、オンライン講習にも対応しています。
講習時間や内容、受講料、科目免除、留意事項を簡潔に紹介すると、以下のとおりです。
項目 | 区分 | 概要 |
---|---|---|
講習時間・講習内容 | 甲種新規講習 | 時間 : 10時間程度(2日間) 内容 : 防火管理の意義および制度/火気管理、施設・設備の維持管理/防火管理に係る訓練および教育/防火管理に係る消防計画等 |
乙種講習 | 時間 : 5時間程度(1日間) 内容 : 上記の講習事項のうち、基礎的な知識および技能 |
|
甲種再講習 | 時間 : 2時間程度(半日) 内容 : 最近の法令改正の概要/火災事例研究 |
|
科目免除 | (特種・一種・二種) 消防設備点検資格者 |
防火管理の意義および制度の講習免除 |
自衛消防業務講習修了者 | ||
受講料(税込) | 甲種新規講習 | 8,000円 |
乙種講習 | 7,000円 | |
甲種再講習 | 7,000円 | |
留意事項 | ― |
|
受講料は、主催先や消防署等により異なる場合があるため注意しましょう。
防火管理者資格の有効期限と再講習
防火管理者資格に有効期限はありません。
ただし、 「収容人員が300人以上の特定防火対象物」 の甲種防火管理者は、新規の甲種防火管理者講習または再講習を受講した日以後の最初の4月1日から5年以内ごとに、再講習を受講する必要があります。選任日が講習修了日から4年を超える場合は、選任日から1年以内に再講習を受講しなければなりません。
甲種防火管理者は、以下の2つのパターンのどちらに当てはまるかを確認し、再講習を受けてください。
- ●選任日が講習修了日から4年以内の場合 : 講習修了日以後の最初の4月1日から5年以内に再講習を受講
- ●選任日が講習修了日から4年を超えている場合 : 選任日から1年以内に再講習を受講
再講習以後も同様のパターンで、直近の再講習修了日以後の最初の4月1日から5年以内ごとに再講習の受講が義務付けられています。
防火管理者の選任・解任届出の提出
防火管理者を選任・解任した際は、管轄の消防署に届出を提出する必要があります。防火管理者に選任された人は、消防計画を作成して提出する義務もあるので、忘れずに対応してください。
各種申請様式は、管轄の消防署ホームページでダウンロード可能です。
防火管理者選任命令に従わなかった場合・選任・解任の届出を怠った場合の罰則
防火管理者選任命令に従わなかった場合や、選任・解任の届出を怠った場合は、罰金や懲役刑、使用禁止、停止、制限等の罰則に処されます。一例は以下のとおりです。
処分される対象者 | 罰則規定 |
---|---|
防火管理者選任命令に違反した者 | 6月以下の懲役または50万円以下の罰金 |
防火管理者選解任届出義務に違反した者 | 30万円以下の罰金または拘留 |
防火管理者を選任・解任した際は、忘れずに管轄の消防署へ届出を提出しましょう。
防火管理者以外に企業が備えておくべき防災対策
火災発生にはさまざまな原因があるので、単に防火管理者を選任しただけでは、火災をはじめとする災害への備えとして十分ではありません。
例えば、大規模地震をはじめとする自然災害でも火災は発生します。そのため、防火管理者の選任に加え、災害に対する効果的な防災対策を講じることが大切です。
企業が備えておくべき防災対策の一例は以下のとおりです。
- ●BCPの策定
- ●定期的な訓練の実施
- ●安否確認システムの導入
BCPは、災害や緊急事態が発生した際に事業への影響を最小限に抑え、迅速な復旧を果たすための計画です。リスク評価や業務優先順位の設定、代替手段の検討等、災害や緊急事態の発生に備えて事前準備や行動計画の作成を行います。広範囲のリスクに対応する計画のため、防火管理者の選任とあわせて策定することをおすすめします。
また、防火管理者の選任やBCPの策定と同様に、定期的な訓練の実施も重要です。防災訓練や避難訓練の実施は、行動計画の実効性を高める他、有効性の改善・見直しに役立ちます。災害に備えるだけではなく、災害の発生を想定した定期的な訓練を行いましょう。
さらに、災害時には従業員の安否確認が重要です。安否確認システムを導入しておけば、安否確認メールの自動配信や自動回答集計により、各従業員の状況をスムーズに把握できます。
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BCPや安否確認システムについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:災害時に役立つBCP(事業継続計画)とは?具体的な効果や策定のポイントを紹介
関連記事:安否確認システムとは?主な機能や導入メリットを紹介
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---|---|---|
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~150名 | 13,200円 | 14,355円 |
~200名 | 15,400円 | 16,940円 |
~300名 | 17,600円 | 19,910円 |
~400名 | 19,800円 | 22,880円 |
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防火管理者は一定規模の建物・テナントで選任が必要
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なお、防火管理資格は防火管理に限定されます。企業としてさまざまな災害に備えるなら、BCPの策定や安否確認システムの導入も有効です。安否確認システムを導入すれば、災害時・緊急時の安否確認業務の負担を減らすことができるでしょう。
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監修者 三沢 おりえ(みさわ おりえ)
総合危機管理アドバイザー
防犯・防災、護身術の講演会やセミナー、イベント、メディア対応等幅広く活動。日本一非常食を食べていると自負する非常食マイスターでもある。総合防犯設備士、危機管理士、防災士。
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