実質的に再生可能エネルギー100%の電力 「再エネECOプラン」 で
完全ゼロエミッションの電気バス運行を実現

保有車両955両、従業員数1,843名(いずれも2021年3月時点)の阪急バス株式会社さま。約30年前からハイブリッドバスを導入するなど、以前から環境対策に熱心に取り組んで来られました。さらに、カーボンニュートラル時代に向けて、2021年10月より大阪大学の学内連絡バスに大型の電気バスを導入されました。今回、実務面も含めて電気バス導入の検討を先導された同社の自動車事業本部営業企画部車両課長兼経営企画部(次世代モビリティ担当)課長の瀧川文章さまに、導入の経緯などについて伺いました。

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阪急バス株式会社さま 「EVバスパッケージサービスおよび再エネECOプラン」 導入の決め手

  1. グループを挙げたサステナブル社会の実現に向けて、環境にやさしい電気バスを導入
  2. 実質的に再生可能エネルギー100%の電力で、完全ゼロエミッション運行を実現
  3. バス運休日は蓄電池として活用。電力のピークカットにも貢献
  4. 大阪大学、関西電力との産学連携で、電気バスの最適化充電に向けた実証実験を実施

サステナブルな社会を目指して、より環境にやさしい電気バスを導入

経営企画部
課長 瀧川 文章さま

当社は1993年にハイブリッド車を導入するなど、いち早く環境に配慮したバス事業を行っています。1999年4月に 「ひととまちに優しい阪急バス」 という企業理念を掲げ、より環境に適した車両の導入の検討に着手しました。2000年にはCNG(圧縮天然ガス)車、2008年の12月から廃食用油を再生したバイオディーゼル燃料によるバスの運行を開始しました。一昨年営業を開始した大阪営業所でもバイオディーゼル燃料の発電機を稼働させています。燃料の素となる廃食用油は、自社の社員食堂やグループの給食センターなどから集めたものをリサイクルしています。
カーボンニュートラルの時代を迎え、阪急阪神ホールディングスグループとしてもサステナブルな社会(持続可能な社会)の実現に向けて、環境保全推進に対する取り組みをより一層強化することが急務となっており、今までの取り組みだけではまだ不十分だと考えています。このような要因を背景に、環境にやさしい次世代車両として電気バスに着目し、関西電力さんと一緒に導入検討を開始しました。

当社はかねてより大阪大学の学内連絡バスを運行していますが、関西電力さんより 「学内バスを電動化し大阪大学さんの知見を活用しながら、電気バスの最適な充放電制御を行うための実証実験をしてはどうか」 という提案をいただき、大阪大学さん、関西電力さん、当社の産学共同体で推進することになりました。

関西電力の 「再エネECOプラン」 で、ゼロエミッション・バスを運行

今回導入する電気バスは中国のBYD社製ということもあり、日本製との車両スペックの相違点、特に安全面での不安はありましたが、導入前に電気バスを実際に確認したことで問題ないと判断しました。
また、運用面での課題は、先行導入している他社へのヒアリングや関西電力さんを含めた関係者と情報交換しながら事前に対策を把握することに努めました。 検討段階で判明した急速充電器の導入により最大需要電力が上昇して電気料金が大幅に増加する課題についても、関西電力さんに事業所の電力使用状況を基に充電スケジュールを細かくマネジメントしていただき、料金の増加を最小限に抑えながら導入を進めることができました。 社内からは、化石燃料を使用したゼロカーボンでない電力で充電を行うことへの懸念がありましたが、実質的に再生可能エネルギー100%の電力を使用できる 『再エネECOプラン』 を関西電力さんからご提案いただくことで社内コンセンサスを得ました。電気バスによる走行中のゼロエミッションはもちろん、充電時に再生可能エネルギー100%の電力を用いることで 「完全ゼロエミッション化」 を実現しています。バス事業者としてカーボンニュートラルに向けた施策をより加速させていきたいと考えています。

年間約200日の運休日は、大型蓄電池として事業所に放電。
VPP実証実験にも参加

現在、BYD社の大型電気バスを大阪大学の学内連絡バスとして運行していますが、授業が休みとなる土日祝や夏休み、年末年始等は運休となります。1年のうち、稼働日は160日程度、残り約200日は営業所で駐車していることになります。その間にいかに車両を有効活用するかを検討する過程で、大きな蓄電池として使用するという発想に至りました。夜間に充電した電気を、昼間に事業所に放電することで、電力のピークカットを行うことが目的です。

経営企画部
課長 瀧川 文章さま

大学での運行は2021年10月の開始からまだ半年足らず(取材時2022年2月)であり、夏休みはこれからですが、電力需要が上がる真夏の昼にバスからの電気を使用することでどれほどの効果があるか、非常に期待しています。また、このような放電可能な時期、時間帯があることから、関西電力さんが実施しているVPPの実証実験にも参加しています。

※ VPP:バーチャルパワープラント・仮想発電所

実証実験による効果検証で、
路線バスへの導入やカーボンニュートラルに向けた環境施策を推進

実証実験では大阪大学の学内連絡バスにおいて2両の電気バスを導入していますが、2022年4月からはこのうち1両を豊中・吹田市内の一般路線に導入し、どういう状況になるのか、どのような運用が必要かといった課題を洗い出したいと考えています。

冬シーズンの運行では、新しい課題も見つかりました。寒さの厳しい暖房使用時は想定以上に航続距離に変化があり、最も悪条件下での航続距離というものが、この冬でおおよそ把握できました。
現状の学内連絡バスでもキャンパス間を移動する際は公道を走ります。しかし、私道走行が中心の学内連絡バスとは異なり、路線バスでは公道走行が中心のため、信号や渋滞、バス停での乗降時等のストップアンドゴー(頻繁に停車・発進を行うこと)による電力消費等も計測する必要があります。電気バスにとってどのようなロケーションが適しているのか、さまざまな要因を踏まえて大阪大学さん、関西電力さんとともに、これからの運行の最適化を検討していきたいと思います。
阪急阪神ホールディングスグループでは、2020年5月に策定した 「阪急阪神ホールディングスグループ サステナビリティ宣言」 に基づいて、2030年度にCO2排出量を46%削減(2013年度比)するグループ共通の目標を設定し、グループ各社で取り組んでいます。今回の電気バス導入、さらには路線バスの電動化拡大などにより、カーボンニュートラルに向けた環境施策を進めていきたいと考えます。

担当者のコメント

関西電力株式会社 ソリューション本部
営業部門 法人営業第一部 法人営業グループ
副長 岩渕 亘匡

今回、阪急バスさまには、「車両」、「充電器」、「エネルギーマネジメント」、「工事」 をパッケージ化した 「電気バスパッケージサービス」 をご採用いただきました。
また、弊社の 「再エネECOプラン」 を併せてご採用いただいたことで、実質再生可能エネルギー100%となり、完全なゼロカーボンでの電気バスの運行を実現されました。
今後もこのような先進的な取り組みを進め、運輸業界でのカーボンニュートラルの実現に向けて、様々なお客さまに展開していきたいと考えています。

関西電力株式会社 ソリューション本部
開発部門 eモビリティ事業グループ
課長 植村 浩気

2021年2月より、阪急バスさまには、大阪大学さま、弊社との三社による 「電気バス導入に伴う最適な充放電システムの構築に向けた産学連携による実証実験」 にも参画いただいております。阪急バスさまの運行データの活用や運行に係る課題等をお聴きしながら、最適な充放電システムの構築に向けたアルゴリズムの完成を目指しています。来るべき電気バスの大量導入時代を見据え、三社の知見を結集することで、電気バスを効率的に大量導入・運行できるしくみづくりを進めてまいります。

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阪急バス株式会社さま
住所
大阪府豊中市岡上の町1丁目1番16号
H P
https://www.hankyubus.co.jp/
事業内容
自動車運送事業及び自動車整備事業、
一般旅客自動車運送事業の管理の受託事業、
自動車リース事業、売店の経営、
貸ビル及びモータープールの経営

1927(昭和2)年設立。大阪・京都・兵庫を営業エリアとし、関西最大、国内でも屈指のバス事業者。阪急阪神ホールディングスの一員として環境対策を展開するかたわら、独自の企業理念として 「ひととまちに優しい阪急バス」 を制定。カーボンニュートラル時代に向けた先進的かつ意欲的な取り組みを行っている。

*掲載の情報は2022年2月のものです。