太陽光発電は、省エネ・省CO₂によりSDGsへの貢献につながるとともに、売電により利益を得られる場合もあり、多くの企業で導入が進んできました。しかし、電気の買取価格は年々下落しており、最近は発電した電気を売らずに自社で使用する自家消費型太陽光発電を選ぶ企業が増えています。
この自家消費型太陽光発電には、主に 「自社所有型」 と 「PPAモデル」 の2種類があります。今回は、両者の違いやそれぞれのメリット・デメリットを比較し、どちらのモデルが自社に向いているか検討する際のヒントをご紹介します。

自家消費型太陽光発電の 「自社所有型」 と 「PPAモデル」 とは

自家消費型太陽光発電は、所有形態の違いによって 「自社所有型」 と 「PPAモデル」 の2種類に分けられます。
「自社所有型」 とは、その名のとおり太陽光発電設備を自社で購入・設置し、運用するモデルです。 設備の運用・管理・保守に手間や費用がかかりますが、設備も発電した電気も自社のものとして自由に使うことができます。
「PPAモデル」 とは、Power Purchase Agreement(電力販売契約)の略で、「第三者所有モデル」 とも呼ばれます。「PPAモデル」 は、PPA事業者が太陽光発電設備を購入し、需要家(電気を使用する企業)の敷地や施設に設置して、需要家がPPA事業者から発電した電気を購入するモデルです。PPA事業者は、太陽光発電設備を設置し、運用・管理・保守を行います。需要家は太陽光発電設備で発電された電気を利用し、使用量に応じた料金をPPA事業者へ支払います。
「PPAモデル」 はアメリカを中心に世界各国で普及が進んでいます。日本でも、脱炭素ニーズの高まりに加え、初期投資なしで運用・管理・保守に手間がかからない手軽さから、「PPAモデル」 の導入が加速しています。

「自社所有型」 のメリット・デメリット

「自社所有型」 と 「PPAモデル」 には、それぞれメリット・デメリットがあります。まず 「自社所有型」 のメリットとデメリットについて解説します。

■ 「自社所有型」 のメリット

① 発電した電気を無料で使用できる

発電した電気は、自社のものとして自由に使えます。発電した電気を自家消費することで、電力会社から購入する電気を減らして電気料金を削減できます。

② 短期間で投資回収が可能

「自社所有型」 の場合、設備の初期投資や設置後の運用・管理・保守に費用はかかりますが、発電した電気を無料で自家消費できます。そのため、電気料金の削減額がPPAモデルと比べて大きく、比較的短期間で投資回収できる場合があります。太陽光発電設備の規模にもよりますが、条件がよければ10年程度で投資分を回収できると言われています。

■ 「自社所有型」 のデメリット

① 多額の初期投資が必要

太陽光発電設備を設置するには、設備費や工事費など多額の初期投資がかかります。事業用の場合、比較的小規模な設備であっても数百万円、大規模な設備であれば1,000万円~数億円の初期投資が必要です。

② 運用・管理・保守に手間や費用がかかる

太陽光発電設備の導入後は、日々の運用・管理・保守を行う必要があります。定期的なメンテナンスや故障部品の取り換えなど、手間や費用が継続的にかかります。また、固定資産税や保険料といったランニングコストも発生します。

③ 各種届出・対応が必要

太陽光発電設備で発電した電気を使うためには、地域の電力会社に系統連系を申し込み、承諾を得る必要があります。また設備の設置にあたっては、消防法や景観法など関係法令に則って各種対策を講じる必要があり、届出や承認の手続きを行わなければなりません。

「PPAモデル」 のメリット・デメリット

これまで自家消費型太陽光発電といえば 「自社所有型」 が一般的でしたが、新しい形態として登場したのが 「PPAモデル」 です。「PPAモデル」 のメリットとデメリットについて解説します。

■ 「PPAモデル」 のメリット

① 初期投資が不要

PPA事業者が太陽光発電設備を設置するため、初期投資が不要です。導入後にかかる費用は、電気の使用量に応じてPPA事業者に支払う料金のみです。PPA事業者に支払う料金の方が電力会社の電気料金より割安であれば、電気料金の削減が可能になります。

② 運用・管理・保守の手間や費用がかからない

設置後の運用・管理・保守をPPA事業者に任せられることもメリットの1つです。設備の遠隔監視や異常時の対応をPPA事業者が行う場合が多く、自社の業務負担を軽減できます。設備が故障した場合は、原則としてPPA事業者が費用を負担したうえで修理するので、通常、需要家が追加費用を支払う必要はありません。
※ 需要家においても、主任技術者による太陽光発電設備の保安・監督が必要な場合があります。

③ 契約期間満了後に所有権を自社に移転できる場合がある

PPA事業者との契約によっては、契約期間が満了した際に、その後の設備の取り扱いを複数の選択肢から検討できる場合があります。中には、太陽光発電設備の所有権をPPA事業者から自社に移転できる場合もあり、この場合には、その後の運用・管理・保守は自己負担になりますが、PPA事業者に料金を支払うことなく、太陽光発電による電気料金の削減メリットを享受できます。

④ 長期的に安定したコストでエネルギーを調達できる

多くの場合、PPA事業者に支払う料金単価は固定です。燃料の高騰や為替の変動などのさまざまな外的要因によって電力会社の電気料金は変動しますが、「PPAモデル」 は料金単価が固定であるため電気料金の変動リスクを回避し、長期にわたって安定した価格でエネルギーを調達できます。

■ 「PPAモデル」 のデメリット

① 契約期間が長い

「PPAモデル」 はPPA事業者と15~20年程度の長期契約を交わすことが多く、中途解約時に違約金が発生する場合がほとんどです。

② 設備の交換・処分に制限がある

一般的に契約期間中は、太陽光発電設備の交換・処分や、設備を設置している建物の取り壊しや建て替えは、違約金等の対象になるため、事前にPPA事業者に相談する必要があります。

自社に合った太陽光発電の選び方

これまで見てきたように、「自社所有型」 と 「PPAモデル」 にはそれぞれ特徴があり、企業によって適しているモデルが異なります。
「自社所有型」 は、まとまった投資や運用・保守・管理を自社で実行できて、太陽光発電設備を自由に扱いたい企業におすすめです。
一方で 「PPAモデル」 は、手間やまとまった費用をかけずに太陽光発電設備を導入したい企業におすすめです。「自社所有型」 と違い初期投資だけでなく運用・管理・保守の手間や個別の費用もかからないことが多いため、自社の労力を抑えて太陽光発電を導入することができます。長期にわたって使用できる遊休地や屋根があるなら、有効活用の一策にもなります。

<自社所有型とPPAモデルのメリット・デメリット>

まとめ

自家消費型太陽光発電には 「自社所有型」 と 「PPAモデル」 があり、それぞれのメリット・デメリットやどのような企業が適しているかをご紹介しました。
関西電力が提供する太陽光発電オンサイトサービス (https://sol.kepco.jp/taiyoko/) は、「PPAモデル」 の自家消費型太陽光発電であり、初期投資なしでCO₂排出量を削減でき、条件によって施設の電気料金を抑えられる場合があります。「PPAモデル」 の導入をご検討であれば、ぜひ関西電力にご相談ください。
脱炭素へ向けた社会的な流れが加速している中、太陽光発電を導入する企業も増えています。「自社所有型」 と 「PPAモデル」 の違いを理解し、自社の状況にあわせて最適な方法をご検討ください。