ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)とは?メリット・課題や補助金・事例を紹介
2025.1.23
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目次
ソーラーシェアリングは、農地を活用して農業と発電を同時に行う取り組みです。農地に支柱を立てて、その上部に太陽光パネルを設置して発電します。
発電した電力は、農機等で自家消費ができる他、売電して収入を得ることも可能です。農業経営を改善する手段として、ソーラーシェアリングが注目されています。
この記事では、ソーラーシェアリングとは何か、ソーラーシェアリングのメリットや課題、導入事例等を紹介します。
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)とは
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)とは、農地に支柱を立てて、上部空間に太陽光パネルを設置し、農作物の栽培と発電を同時に行う取り組みのことです。
ソーラーシェアリングにより、作物の販売収入に加えて、太陽光発電による電力を自家消費してコスト削減が可能です。電力を売電すれば、農業以外の収益を確保することもできます。
また、脱炭素化に向けた再生可能エネルギー普及の観点でも、ソーラーシェアリングは注目されています。
農林水産省 「営農型太陽光発電について(令和6年11月)」 によると、営農型太陽光発電設備を設置するための農地の一時転用許可実績は、2022年度までに5,351件、その発電設備下部の農地面積は1,209.3haとなっています。
ソーラーシェアリングの普及は着実に進んでいて、年度ごとの導入件数も2022年度までの時点で増加傾向にあります。
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の導入が推進されている背景は?
ソーラーシェアリングの導入が推進されている背景としては、以下が挙げられます。
- ●農業問題の解決策としての期待
- ●脱炭素化に向けた取り組みとしての推進
日本の農業は、高齢化や後継者不足、農地の利用減少等の問題に直面しています。そこで、ソーラーシェアリングは、電力の自家消費や売電収入により、農業経営の収益性を高め、上記の課題を解決する手段として期待されているのです。
また、脱炭素化に向けた取り組みの一環としてもソーラーシェアリングが注目されており、再生可能エネルギーの拡大を図るために、補助金や規制緩和等を通じてソーラーシェアリングの普及が推進されています。
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)導入のメリット
ソーラーシェアリング導入のメリットとして、具体的には以下が挙げられます。
- ●耕作放棄地を有効活用できる
- ●さまざまな種類の作物を栽培できる
- ●脱炭素に貢献できる
- ●農業以外の収益を確保できる
耕作放棄地を有効活用できる
農業の継続が難しく放置されていた耕作放棄地をソーラーシェアリングで有効活用して、収益を生むことが可能です。
なお、ソーラーシェアリングを導入するには、農地法に基づく一時転用許可が必要ですが、農地以外の転用が制限されている農振農用地(青地)にも、条件が合えばソーラーシェアリングが導入できます。
さまざまな種類の作物を栽培できる
ソーラーシェアリングのもとでは、さまざまな種類の作物を栽培可能です。
特に、陽生植物ほど日照を必要としない「半陰生植物」や、日照をあまり必要としない「陰性植物」は、ソーラーシェアリングと相性が良いとされています。また、太陽光パネルの隙間を空ければ「陽生植物」も栽培できる場合があります。
農林水産省農村振興局 「営農型太陽光発電設備設置状況等について(令和4年度末現在)」によると、ソーラーシェアリングの栽培作物の種類と割合は次のとおりです※。
作物分類 | 主な作物 | 割合 |
---|---|---|
土地利用作物 |
|
9% |
野菜等 |
|
29% |
果樹 |
|
13% |
花き |
|
0.3% |
観賞用植物 |
|
36% |
その他 |
|
13% |
- ※令和4年度末で存続しているもののうち回答があったものを集計
脱炭素に貢献できる
ソーラーシェアリングで再生可能エネルギーを活用することで、CO₂排出量の削減につながります。化石燃料を使用せずにエネルギーを生産でき、環境負荷の低減へ貢献が可能です。エネルギー自給率の改善のためにも、ソーラーシェアリングの拡大が期待されています。
農業以外の収益を確保できる
太陽光発電で生み出した電力は、自家消費してコスト削減に利用できる他、余剰な電力は売電して収益につなげることもできます。
特に収益が不安定な農家にとっては、追加の収入源が得られることで、収益の安定化が図れ、農業経営の改善策としても有望です。
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)導入の課題
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の導入を始めるうえで注意点や課題としては、以下が挙げられます。
- ●初期投資が必要
- ●長期継続が必要
- ●融資を受けにくい
初期投資が必要
ソーラーシェアリングを導入する際には、太陽光パネルや周辺機器の他、架台や支柱の費用が必要です。高い位置にパネルを設置するため、一般的な太陽光発電と比較すると費用は高額になります。
例えば、50kWほどの規模でソーラーシェアリングを導入する場合、費用としては1,000~2,000万円ほどが目安です。
長期継続が必要
ソーラーシェアリングでは、農林水産省より20年間営農を継続することが義務付けられています。農業を主要事業として行う条件のもとで、例外的に農地での太陽光発電が認められている形です。
ソーラーシェアリングを導入する際には、農業従事者の高齢化等も含め、長期的な見通しのうえで検討を進める必要があります。
融資を受けにくい
ソーラーシェアリングは一般的に融資を受けにくいといわれています。ソーラーシェアリングの一時転用許可期間が3年間であり、3年ごとの更新のたびに撤退のおそれがあることが理由のひとつです。
また、初期費用が高額であるため、費用回収にも長い期間がかかります。撤退のおそれや費用回収の面から、リスクが高いと銀行から判断されやすい傾向があります。
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)で活用可能な補助金・支援制度
一般社団法人 環境技術普及促進協会 「地域における太陽光発電の新たな設置場所活用事業(実施期間:2022~2025年度)」において、ソーラーシェアリングも対象になる補助金制度があります。
上記事業では、営農地、ため池、廃棄物処分場を活用した太陽光発電について、要件を満たす場合に支援が受けられます。補助金が活用できると、ソーラーシェアリングを導入する際の初期費用の負担は大幅に抑えられます。
補助金の交付額 | 補助率 2分の1(補助金の上限は1億5,000万円) |
---|---|
補助対象設備 |
|
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の失敗を避けるためにできること
ソーラーシェアリングで失敗を避けるためにできる取り組みとしては、例えば以下のようなものが挙げられます。
- ●長期的な見通しを立てる
- ●太陽光発電に詳しい業者や専門家の助言を受ける
- ●補助金を活用して初期費用を抑える
ソーラーシェアリングは初期費用として大きな金額がかかり、20年間の営農継続も必要になるため、長期的な見通しを立てて導入を検討する必要があります。
また、導入にあたっては、専門家や業者への相談も重要です。例えば、ソーラーシェアリングの導入実績がある業者に相談すると、具体的な助言やサポートが受けられる可能性があります。
初期費用が負担に感じている場合には、補助金の活用も検討しましょう。2024年度時点では、条件を満たせば、「地域における太陽光発電の新たな設置場所活用事業」 による補助金制度が利用できます。
初期費用を抑えるなら、PPAモデルで太陽光発電を導入する方法もあります。PPAは、エネルギーサービス事業者と契約して太陽光発電設備を設置してもらう導入方法です。事業者によっては、初期費用なしで太陽光発電を導入できる場合があります。
太陽光発電のPPAモデルについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:太陽光発電のPPAモデルとは?種類や導入メリット・デメリットを解説
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の導入事例
農林水産省 「営農型太陽光発電について(令和6年11月)」をもとに、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の導入事例をいくつか紹介します。
事業実施主体 | 事業の概要 |
---|---|
五平山農園(千葉県いすみ市) |
|
千葉エコ・エネルギー(株)(千葉県匝瑳市) |
|
特定非営利活動法人OIKOS天竜(静岡県浜松市) |
|
農地の新たな活用方法として、地域ごとに独自の成果を上げています。導入事例が今後も広がることで、農地の効率的な活用や再生可能エネルギーのさらなる普及が期待されます。
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なお、導入の際には、補助金申請のサポートもしています。補助金を受けることで、月々の料金負担をさらに抑えることが可能です。
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- ※20年程度の長期契約となります。途中解約には違約金が発生します。
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)で農業と太陽光発電の発展を目指そう
農地に太陽光発電を設置して農作物の栽培と発電を同時に行うソーラーシェアリングにより、農業経営のさらなる改善が期待でき、耕作放棄地も有効活用できます。
ソーラーシェアリングの注意点としては、大きな金額の初期費用がかかること、長期継続が必要なこと等が挙げられ、導入の際には十分な検討が必要です。
関西電力の「太陽光発電オンサイトサービス」なら、導入から運用まで関西電力グループが一貫してサポートします。まずはWebページ等からお気軽にお問い合わせください。
監修者 近藤 元博(こんどう もとひろ)
愛知工業大学 総合技術研究所 教授
1987年トヨタ自動車に入社。分散型エネルギーシステム、高効率エネルギーシステムならびに新エネルギーシステムの開発、導入を推進。あわせて生産工程から排出する廃棄物や、使用済み車両のリサイクル等幅広い分野で廃棄物の排出削減、有効利用技術の開発導入を推進。
「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」他エネルギーシステム、資源循環に関する表彰受賞。2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて資源問題、エネルギー問題に取り組み中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 委員他
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