オフサイトPPAとは?自己託送・オンサイトPPAとの違いやメリット・デメリットを解説
2024.10.1
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目次
オフサイトPPAは、初期費用ゼロで需要地から離れた場所に太陽光発電設備を設置できる方法です。太陽光発電を設置できるスペースを保有していない企業でも、太陽光発電で発電した電力を利用できます。
メリットの多い方法ですが、デメリットもあるので、太陽光発電の導入を検討している場合は知っておくと良いでしょう。
この記事では、オフサイトPPAのメリットやデメリット、オンサイトPPAとの違い等を解説します。また、おすすめの導入方法も紹介するため、太陽光発電を検討する際の参考にしてください。
オフサイトPPAとは?
オフサイトPPAとは、需要家がエネルギーサービス事業者と契約を交わして、需要家の敷地外に太陽光発電設備を導入し、再エネ電力を調達する仕組みです。
設備の所有権は事業者が持つため、太陽光発電設備の導入費用がかからず、維持管理やメンテナンス等の手間や費用が直接発生しません。
また、太陽光発電設備の導入は環境価値を得られるため、環境への取り組みをアピールしたい企業にとっては大きなメリットです。
ほかにも、オフサイトPPAは電力を必要とする工場やオフィス等の需要地の敷地外に設置するため、スペースの制限を受けず、MW規模の太陽光発電設備を導入しやすい傾向があります。
なお、オフサイトPPAは 「フィジカルPPA」と 「バーチャルPPA」 の2種類に分かれています。
フィジカルPPA | 需要家が電力と環境価値をセットで購入する |
---|---|
バーチャルPPA | 需要家が環境価値だけを購入する |
PPAの生み出す環境価値
PPAで作る電力は、従来の火力発電等から作られる電力と同じものです。しかし、再生可能エネルギーによる電気は 「グリーン電力」 と呼ばれ、「電気や熱そのものの価値」の他に、二酸化炭素を排出しないという 「環境価値」 を持っています。
そのため 「再エネ電力証書」 「非FIT非化石証書」 等により環境価値を証明して、電力そのものの価値から環境価値を切り離すことで、異なる事業者間での取引に利用可能となります。
自己託送との違い
自己託送は、遠隔地に設置した非FIT太陽光発電所の再エネ電力を、既存の送配電ネットワーク経由で需要地点へ送電(託送)する仕組みです。
遠隔地から電気を送る点ではオフサイトPPAと共通していますが、太陽光発電設備の所有者が異なります。
- ●オフサイトPPA…太陽光発電設備の所有者は事業者
- ●自己託送…太陽光発電設備の所有者は需要家
自己託送では需要家が太陽光発電設備を所有するため、設置から維持管理、メンテナンスまで需要家自身が行います。
一方、オフサイトPPAは、需要家とは別の事業者が太陽光発電設備を設置し、維持管理やメンテナンスを行い、その費用を負担する導入方法です。
なお、2021年に自己託送制度は見直され、厳格化されました。
オンサイトPPAとの違い
PPAは、太陽光発電設備の設置場所の違いからオフサイトPPAとオンサイトPPAの2種類に分かれています。
オンサイトPPAとは、事業者と契約を交わして、需要家の敷地内に太陽光発電設備を導入し、電気料金を支払って電力を調達する仕組みです。
オフサイトPPA | 太陽光発電の設置場所 :需要家の敷地外 |
---|---|
オンサイトPPA | 太陽光発電の設置場所 :需要家の敷地内 |
同じPPAのため、次のメリットは共通しています。
- ●初期費用が不要
- ●維持管理やメンテナンスの手間がかからない
- ●電気料金の削減につながる
ただし、オンサイトPPAでは敷地内に設備を設置するため、オフサイトPPAと異なり送電コストが発生しないことがメリットです。
次の表は、オフサイトPPAとオンサイトPPAの1kWhあたりのコスト一例です。
コストの種類 | オフサイトPPA | オンサイトPPA (屋根設置) |
|
---|---|---|---|
フィジカルPPA(高圧) | バーチャルPPA(高圧) | ||
発電コスト | 13円~16円 | 13円~16円-市場価格 (環境価値分) |
15円~18円 |
小売りコスト | 3円 | 24.5円 (通常の電気料金の場合) |
なし |
託送料 (送配電コスト) |
4円 | なし | |
合計 (需要家コスト) |
20円~23円+再エネ賦課金 | 37.5円~40.5円-市場価格+再エネ賦課金 | 15円~18円 |
なお、高圧の場合、通常の電気料金は、発電コストと小売りコストをあわせて20.5円(燃料費調整額を含む)、託送料が4円、合計で24.5円+再エネ賦課金が目安です。
電気料金の削減を求めるなら、オフサイトPPAよりもオンサイトPPAでの導入を検討しましょう。
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オフサイトPPAの種類
オフサイトPPAにはフィジカルPPAとバーチャルPPAの2種類があり、内容が異なります。
項目 | フィジカルPPA | バーチャルPPA |
---|---|---|
電力の取り扱い | 需要家へ供給 | 市場や他の事業者へ売電 |
環境価値の取り扱い | 電力とセットで需要家へ移転 | 電力と切り離して購入者へ移転 |
取引価格 | 固定価格 | 契約価格と市場価格に基づく差額決済 |
託送料金の取り扱い | 取引価格に追加される | 取引価格に追加されない ただし、現行契約の電気料金に含まれる |
次項より、フィジカルPPAとバーチャルPPAを順番に解説します。
フィジカルPPA
フィジカルPPAは、遠隔地に建設した太陽光発電の電力と環境価値をセットで需要家が購入する仕組みです。電力は、既存の電力系統を介して購入者へ供給されます。
取引価格は固定価格なので、バーチャルPPAに比べて電気料金の見通しを予測しやすく、長期の事業計画や予算計画を立てやすくなります。
バーチャルPPA
バーチャルPPAは、需要家が環境価値のみを購入し、事業者が発電した電力は卸電力市場で売却される仕組みです。需要家は、固定価格と市場価格の差額を決済します。フィジカルPPAとは異なり、電力の直接的な取引を行いません。
事業者から環境価値のみを購入できるので再エネ比率がアップしますが、電力の調達コストは固定化できず、差額決済のリスクを伴います。
オフサイトPPAのメリット
オフサイトPPAは、事業者が需要家の敷地外に太陽光発電設備を設置するため、次のメリットがあります。
- ●初期費用をかけずに太陽光発電設備を導入できる
- ●維持管理やメンテナンスの手間がかからない
- ●電気料金の削減につながる可能性がある
- ●環境価値を得られる
- ●自社で敷地を保有していなくても導入できる
- ●大規模な太陽光発電設備を設置しやすい
- ●複数の施設に電力を送れる
上記を順番に解説します。
初期費用をかけずに太陽光発電設備を導入できる
PPAの最大のメリットは、太陽光発電設備の初期費用が発生しないことです。
産業用太陽光発電の設置費を発電量1kWあたり約26.5万円とすると、100kWの太陽光発電設備を設置するなら2,650万円、1000kWなら2億6,500万円の初期費用が発生します。
その点、PPAでは初期費用を事業者が負担するため、需要家の財政状況に影響を与えません。設置のためのハードルが低く、太陽光発電の導入を検討している需要家におすすめです。
維持管理やメンテナンスの手間がかからない
PPAで設置した太陽光発電設備の所有権は事業者が持つため、原則として契約している需要家が維持管理やメンテナンスを行う必要はありません。
次の表は、太陽光発電のメンテナンスコストをまとめたものです。
出力 | 全体の平均 | 地上設置の平均 | 屋根設置の平均 |
---|---|---|---|
10kW~50kW | 0.51万円/kW/年 | 0.50万円/kW/年 | 0.54万円/kW/年 |
50kW~250kW | 0.49万円/kW/年 | 0.56万円/kW/年 | 0.42万円/kW/年 |
250kW~500kW | 0.48万円/kW/年 | 0.52万円/kW/年 | 0.37万円/kW/年 |
500kW~2,000kW | 0.58万円/kW/年 | 0.61万円/kW/年 | 0.42万円/kW/年 |
1,000kW~2,000kW | 0.62万円/kW/年 | 0.64万円/kW/年 | 0.43万円/kW/年 |
2,000kW以上 | 0.74万円/kW/年 | 0.75万円/kW/年 | 0.24万円/kW/年 |
PPAは、維持管理やメンテナンスの手間が発生せず、直接費用を負担することがなく、すべて事業者に委託できる導入方法です。
電気料金の削減につながる可能性がある
PPAでは、事業者が設置した太陽光発電設備で発電した電力を購入します。通常の電気料金と異なるサービス料金で契約するため、電気料金の削減につながる可能性があります。
次の表は、オフサイトPPA(フィジカルPPA)と通常の電気料金を比較したものになります。
コストの種類 | オフサイトPPA (フィジカルPPA) |
通常の電気料金 |
---|---|---|
発電コスト | 13円~16円 | 20.5円 |
小売りコスト | 3円 | |
託送料 | 4円 | 4円 |
合計 | 20円~23円+再エネ賦課金 | 24.5円+再エネ賦課金 |
なお、実際の発電コストは事業者の提供するサービスによって異なるので、一概に電気料金が安くなることはありません。契約する際は、必ず事前に比較しましょう。
環境価値を得られる
フィジカルPPAやバーチャルPPA等のオフサイトPPAで太陽光発電を導入すれば、環境価値も得られるのがメリットです。
脱炭素化に向けた取り組みが注目されるなか、投資家や消費者は脱炭素を進めている企業を評価する傾向があります。
オフサイトPPAで太陽光発電を導入すれば、環境価値を得られて、例えば以下の国際イニシアチブを達成できます。
国際イニシアチブ | 概要 |
---|---|
CDP | 企業の環境に関する回答結果により企業を評価、スコア付けする |
RE100 | 加盟した企業は事業活動で使用する電力を2030年までに100%再生可能エネルギーで賄う |
SBT | 企業はCO₂排出量と削減目標への対策や進捗状況を報告して開示する義務がある |
上記の国際イニシアチブを達成する、あるいは評価を高めるためには環境価値が必要です。
環境に対する意識が高いと投資家からの評価も高くなり、ビジネスチャンスにも結びつくので、導入を検討しましょう。
自社で敷地を保有していなくても導入できる
太陽光発電を導入する場合は一定のスペースが必要です。
しかし、太陽光発電を導入したいと考えているすべての需要家が、設備の設置に向いている適切なスペースを持っているとは限りません。
オフサイトPPAは自社敷地に設置できるスペースがなくても、太陽光発電設備を設置できます。自社に敷地がなくても設置が可能になるのは大きなメリットです。
バーチャルPPAなら、電気契約を変更せずに環境価値だけを得られるので、自社の状況にあわせて最適な方を選びましょう。
大規模な太陽光発電設備を設置しやすい
オフサイトPPAでは、需要家の敷地外に太陽光発電設備を設置します。
自社の持つ敷地以上のスペースに太陽光発電を導入できるため、大規模な太陽光発電設備を構築しやすいです。
自然エネルギー財団が発表している 「コーポレートPPAの 最新動向(2024年度版)」 によれば、2023年4月~2024年3月までに、オフサイトPPAで1MW(1000kW)以上の太陽光発電を導入した事例は、公表されているだけで42件もあります※。
大規模な太陽光発電を設置したいと考えている場合は、オフサイトPPAを検討しましょう。
複数の施設に電力を送れる
オフサイトPPAは遠隔地で発電した電力を必要な需要地に送る仕組みなので、複数の施設に電力を送ることが可能です。
例えば、全国各地に工場やオフィスがある企業の場合、オフサイトPPAで1ヶ所に大規模な太陽光発電を設置することで、各所にある工場やオフィスへ送電できます。
需要地が複数ある場合は、オフサイトPPAで大規模な太陽光発電を設置して、各所に送電する方法がおすすめです。
オフサイトPPAのデメリット
オフサイトPPAは、多くのメリットがある太陽光発電設備の導入方法です。
一方で次のデメリットがあるため、利用を検討する場合は注意しましょう。
- ●契約期間が長い
- ●サービスによっては電気料金の削減が難しい
- ●非常用電源として利用しにくい
契約期間が長い
契約を結ぶ事業者にもよりますが、PPAは契約期間が20年程度です。
オフサイトPPAのフィジカルPPAは固定価格のため、社会情勢の変化によって通常の電気料金が下落した場合、かえって割高な価格で電力を購入してしまう可能性があります。
PPAは契約期間が長いため、長期的な計画を立てておく必要があると覚えておきましょう。
サービスによっては電気料金の削減が難しい
オフサイトPPAのバーチャルPPAは契約単価がフィジカルPPAと同じ水準ですが、小売コストと託送料が発生するため、通常の電気料金よりも高くなる可能性があります。
1kWhあたり | オフサイトPPA (バーチャルPPA) |
通常の電気料金 | 発電コスト | 13円~16円-市場価格 | 20.5円 (燃料費調整額を含む) |
---|---|---|
小売りコスト | 24.5円 | |
託送料 | 4円 | |
合計 | 37.5円~40.5円-市場価格+再エネ賦課金 | 24.5円+再エネ賦課金 |
市場価格との差額決済のため、サービスによっては電気料金の削減効果を得られない点に注意しましょう。
非常用電源として利用しにくい
オフサイトPPAは需要地から離れた場所に太陽光発電設備を設置する仕組みです。
敷地外に大規模な太陽光発電を導入しやすい方法ですが、設備を設置した場所や送電の途中で災害が発生した場合、電力が需要地まで届きません。
そのため、災害時の非常用電源としては利用しにくいこともデメリットです。
オフサイトPPAの補助金
オフサイトPPAを契約するなら、環境省の 「ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」 が利用できる可能性があります。
ストレージパリティとは、太陽光発電設備の導入に際して、蓄電池を導入したほうが経済的なメリットがある状態を指す用語です。
環境省では、民間企業が自家消費型の太陽光発電と蓄電池を一緒に導入するための支援を行っており、PPAで両方を導入すると補助金を受けられます。
PPAの場合は、補助金を受けると、サービス料金が通常よりも抑えられる可能性が高いです。
オフサイトPPAで太陽光発電を導入する際は、補助金を活用して、さらにおトクに導入しましょう。
ただし、タイミングによっては公募が終了している場合があるので注意が必要です。
オフサイトPPAを申込む流れ
オフサイトPPAを申込む流れは事業者によって異なります。
例えば、関西電力が提供しているオフサイトPPA 「コーポレートPPA」 の場合は、下記の流れです。
- 1.お見積り・ご協議
- 2.お申込み
- 3.利用開始
太陽光発電の設置状況や他のお客さまのお申込み状況にもよりますが、太陽光発電で発電した電力が利用できるまで目安として3ヶ月~1年程度かかるので、興味がある場合は早めにご相談ください。
オフサイトPPAなら関西電力の 「コーポレートPPA」 がおすすめ
関西電力のオフサイトPPA 「コーポレートPPA」 は初期費用ゼロで太陽光発電を設置できるサービスです。
太陽光発電を設置する場所がない場合でも、設置場所をご用意し、再エネ電力を長期間、安定的に提供します。関西エリア以外でもお申込みが可能で、条件によりますが、需要地が移転・閉業した場合でも、供給先を別の需要地に変更してご契約を継続することが可能です※。
関西電力では、お客さまの所有する敷地内に太陽光発電設備を設置できるオンサイトPPA 「太陽光発電オンサイトサービス」 も提供しているので、太陽光発電を導入したい場合はぜひご相談ください。
※契約期間に解約される場合は中途解約金を申し受けます。
オフサイトPPAは敷地を持っていない企業でも太陽光発電設備を導入しやすい方法
オフサイトPPAは需要地外に太陽光発電設備を導入する方法です。事業者が所有権を持つため、初期費用が発生せず、メンテナンスの手間がかかりません。
太陽光発電を敷地外に設置するため、敷地を持っていない、あるいは大規模な太陽光発電を設置したい企業におすすめの方法です。
ただし、オフサイトPPAにはフィジカルPPAとバーチャルPPAがあり、メリットやデメリットが異なるので注意しましょう。
設置スペースを持たない企業は 「コーポレートPPA」 を、ある程度のスペースを保有しており、電気料金の削減効果を期待している企業は 「太陽光発電オンサイトサービス」 をご検討ください。
監修者 近藤 元博(こんどう もとひろ)
愛知工業大学 総合技術研究所 教授
1987年トヨタ自動車に入社。分散型エネルギーシステム、高効率エネルギーシステム並びに新エネルギーシステムの開発、導入を推進。「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」他エネルギーシステム、資源循環に関する表彰受賞。2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて資源問題、エネルギー問題に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 委員他
サービス概要資料
太陽光発電オンサイトサービス
自家消費型太陽光発電で電気料金とCO₂を削減。「太陽光発電オンサイトサービス」 の概要をご紹介します。
資料の一部をご紹介
- 太陽光発電オンサイトサービスとは
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