農地売却の方法や流れは?かかる費用・税金とその他の活用方法も紹介

2025.1.23

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農地売却の方法や流れは?かかる費用・税金とその他の活用方法も紹介

農地は放置していると荒廃していき、企業の財務状況に負担をかけるおそれがあるため、不要な場合は転用や売却を検討すべきです。

しかし、農地売却は時間と手間がかかり、購入者が少ない現状を考えると、早期の売却は難しいかもしれません。

売却以外には、太陽光発電設備を設置して自家発電をする活用方法もあります。手続きは必要ですが、自家発電により電気料金削減等のメリットを得られる場合もあるので、状況にあわせてご検討ください。

この記事では、農地売却の方法や流れ、売却以外の活用方法等を解説します。

農地売却は難しい?

農地売却は法律による規制が厳しいため、主に以下のような理由から、一般的な土地の売却に比べて難しいといわれています。

  • ●購入者が法律で制限されている
  • ●農業事業者の数が減少している
  • ●農地の宅地転用は許可が必要

上記を順番に解説します。

購入者が法律で制限されている

農地は農地法により、次の基準を満たした 「農業委員会から許可を受けた農家」 しか農地を購入できません。

  • ●農地のすべてを効率的に利用すること
  • ●法人の場合は農地所有適格法人であること
  • ●信託の引受けによるものではないこと
  • ●必要な農作業に従事すること
  • ●転貸を行うものではないこと
  • ●周辺の農地利用に支障がないこと

上記の基準を満たせる購入者は、主に個人の農家や農地所有適格法人です。

つまり、農地を農地のまま手放したいと考えていても、すぐに買い手が現れるとは限りません

農業事業者の数が減少している

現在、農業は高齢化が深刻な問題となっており、農業を営む事業者の数は年々減少しています。

特に、農業を継ぐ後継者が不足しているため、事業を続けられなくなった農家が増加し、耕作放棄地も年々増え続けている点が社会問題化しています。

また、農地所有適格法人の数は増加しているものの、農業に従事する人口全体が減少傾向にあります。

農地を農地のまま売却するためには、農地取得の資格がある購入者を探さなければなりませんが、購入者の数が減っているため、売買が成立しにくい状況になっていると覚えておきましょう。

農地の宅地転用は許可が必要

農地は法律によって使い方が農地と決まっていますが、農地転用の許可を得ることによってはじめて、農地以外の目的で利用可能になります。転用許可を得た農地であれば、住宅を建てたり、工場や倉庫を建設したりできるので、売却できる可能性は高いです。

ただし、「農地転用の許可を得る」 と記載したとおり、農地は農地法によって転用に制限がかけられています。

まず、農用地区域内の農地は転用できないため、農用地区域から保有地を除外する手続きが必要です。除外後に、改めて農地の転用を申請しますが、農地の特性によって転用の可否を農業委員会が判断します。

判断した結果、不許可となる可能性もあるので、すべての農地が宅地転用できるとは限りません

農地売却を検討するべき理由

農地売却が難しいとされる主な理由は、購入できる資格者の数が減少傾向にあることと、転用できない可能性があることです。

一方で、次の理由から、使用していない農地は耕作放棄地のようにするのではなく、売却を検討すべきであるともいわれています。

  • ●農地は放置していると荒廃する
  • ●固定資産税が毎年発生する

上記を順番に解説します。

農地は放置していると荒廃する

農地は手入れを怠ると、短期間で荒れてしまい、もともとの耕作地としての価値が失われていきます。

草が生い茂り、土壌も硬化してしまうと、元の状態に戻すのは非常に手間と時間がかかるため、農地としての売却が難しくなる可能性が高いです。

さらに、放置された農地は雑草や害虫の温床となりやすく、近隣住民に迷惑をかける要因にもなります。

荒廃した農地は価値を失い、トラブルの原因になるおそれがあるので、早めの対応が必要です。

固定資産税が毎年発生する

農地を所有している限り、固定資産税が毎年発生します。

農地の固定資産税は農地の種類と評価によって変わり、10a(アール)あたり1,000~数十万円と幅広く、所有している農地の種類と面積によっては大きな負担となるかもしれません。

農地を活用していないまま放置している場合でも、固定資産税は毎年発生し、維持管理するためのコストが積み重なるおそれがあります。

農地の固定資産税やコスト等を考慮するならば、農地を売却して負担をなくすか、有効活用して負担を軽減する方法を検討すべきといえるでしょう

農地売却の方法|そのまま売却・転用して売却

農地売却の方法|そのまま売却・転用して売却

農地は、耕作の目的に供される土地のため、利用方法や売買についての条件が農地法等で厳しく定められています

そのため、農地の売却・転用を検討する場合は、まず転用が可能かどうかを調べる必要があります。農地転用とは、農地の形状等を変更して住宅や工場、商業施設、道路等にすることで、農地以外として活用することです。

農用地区域内農地や甲種農地、第1種農地にあたる場合は、原則として転用が禁止されているため、注意しましょう

原則として転用できない農地の種類

農用地区域内農地 市町村が定める農業振興地域整備計画において農用地区域とされた区域内の農地
甲種農地 市街化調整区域内の
  • ・農業公共投資後8年以内農地
  • ・集団農地で高性能農業機械での営農可能農地
第1種農地
  • ・集団農地(10ha以上)
  • ・農業公共投資対象農地
  • ・生産力の高い農地

ただし、一部例外として転用が認められる場合もありますので、確認のうえ、転用可能な場合は、農地としてそのまま売却するか、転用して売却する方法を選択することができます

農地売却の流れ

農地売却の基本的な流れは以下のとおりです。

  • 1.転用可能かどうかを調べる
  • 2.農地として売却するか農地転用してから売却するかを決める
  • 3.購入者を探す
  • 4.売買契約を締結する
  • 5.農地売買、あるいは農地転用の許可申請を行う
  • 6.許可通知をもらう
  • 7.購入者に土地を引き渡す

上述のとおり、農地転用には条件があるため、まずは転用可能かどうかを確認することが重要です。

農地のまま売却する場合は、農地の取得資格を有する購入者を探し、売買契約を締結します。その後、農業委員会に許可申請を行い、購入者に土地を引き渡して手続きは完了です。

一方、農地を転用してから売却する場合は、購入者を探して売買契約を締結し、農業委員会に転用許可申請を行います。

ただし、契約を締結しても、農業委員会が転用の許可を出さないケースもあります。転用の許可が出れば購入者に土地を引き渡して手続きは終了ですが、許可が下りない場合は契約解除になってしまうため注意しましょう。

なお、提出書類等はケースによって異なるため、事前に確認が必要です。

農地売却にかかる費用と税金

農地を売却した場合にかかる費用と税金の種類は以下のとおりです

費用と税金の種類 概要
仲介手数料 不動産仲介会社を通じて売却を行う場合に支払う手数料
手数料額は物件価格に応じて算出される
依頼報酬 主に農地売却の許可申請や農地転用の許可申請等の手続きを代行した行政書士に支払う費用
譲渡所得税 農地の売却により得た利益(譲渡所得)に課せられる税金
売却額から取得費や売却にかかった諸費用を差し引いた額に対して税率20%がかかる
なお、ケースによっては税率や特別控除が異なる
印紙税 売買契約書に貼る印紙にかかる税金
契約金額に応じて税額が異なる

農地売却には上記のような費用や税金がかかるため、あらかじめ把握することが大切です。

費用や税金を計算に入れながら売却のプランを立てると、予想外の支出を抑えられるので、事前にシミュレーションを行いましょう

売却以外の農地活用方法

農地は放置していると荒廃して価値を失い、コストがかさむため、不要なら早期の売却が望ましいです。

しかし、農地売却は難しい場合もあるため、次のような活用方法も検討してみてください。

  • ●事業を創出し農地として利用する
  • ●農地を貸し出す
  • ●太陽光発電設備を設置する

上記を順番に解説します。

事業を創出し農地として利用する

農地を活用するなら、そのまま農地として利用する方法があります。

例えば、農業に関連する新しい事業を展開すれば、農地を活用しながら新たな収益源を生み出せるでしょう。

地域に貢献しつつ、自社に農業の付加価値を持たせることで、新たなビジネスモデルを構築するきっかけを得られます

農地を貸し出す

農地を手放すのではなく、第三者に貸し出す方法も有効な活用手段のひとつです。農地を貸し出すことで、賃貸料を得られ、農地の維持費用や固定資産税の一部を賄えます

ただし、農地を貸し出す場合にも農地法の制限がかかるので、事前に確認しましょう。

太陽光発電設備を設置する

農地を有効活用する方法として、太陽光発電設備を設置する選択肢もあります。農地に太陽光発電設備を設置した場合のメリットは以下のとおりです。

  • ●電気料金を削減できる
  • ●余剰電力の売電収入を得られる
  • ●電気料金高騰の影響を受けない
  • ●CO₂排出量の削減に寄与できる
  • ●災害時にエネルギーを確保できる

太陽光発電設備を設置すれば、発電した電気を自家消費することで、電気料金の削減効果が期待でき、余剰電力を売電すれば一定の収入を得ることが可能です。自家消費により電力会社から購入する電気を減らすことができれば、社会情勢の変化によって電気料金が高騰しても影響を受けにくくなるでしょう。

また、脱炭素化に向けた取り組みが注目されるなか、現在は気候変動への対策として再生可能エネルギーの導入が進んでいます。そのため、再生可能エネルギーを利用すれば、温室効果ガスの排出量の削減に貢献しているとして、評価を得られます。

その他、太陽光発電や蓄電池を導入することで非常時の電源を確保できるため、災害時の停電等に対応し、事業再開がスムーズに行える点もメリットです。

ただし、農地に太陽光発電設備を設置する場合も、農地を転用する場合と同様に、農地法に基づき 「農地転用許可」 を取得する必要があります。転用手続きには申請や審査が必要で、時間と手間がかかる点に注意しましょう。

太陽光発電のメリットについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

太陽光発電導入で農地を活用するなら関西電力の 「太陽光発電オンサイトサービス」 がおすすめ

太陽光発電導入で農地を活用するなら関西電力の 「太陽光発電オンサイトサービス」 がおすすめ

農地に太陽光発電設備を導入するには転用の許可が必要です。無事許可が得られたとしても、太陽光発電設備を自己所有するなら、機器の選定や維持管理、メンテナンスを自社で行う必要があるため、負担も大きいでしょう。

そこで、コストやメンテナンスの負担を軽減するために、オンサイトPPAでの導入をご検討ください

オンサイトPPAとは、電力を必要とする需要家がエネルギーサービス事業者と契約を結び、需要家が保有する敷地内に太陽光発電設備を設置し、発電した電力を割安な電気料金で調達する仕組みです。太陽光発電設備の所有権は事業者が持つため、需要家は太陽光発電設備の導入費用がかからず、原則として維持管理やメンテナンスの手間が発生しません。

例えば、関西電力では、初期費用ゼロで太陽光発電設備を導入可能なオンサイトPPA 「太陽光発電オンサイトサービス」 を提供しています。

関西電力グループが太陽光発電設備の設置から運用、メンテナンスをワンストップで行い、発電した電気をお客さまが利用するサービスで、契約期間は20年ほどです※1

太陽光発電設備の設置費用等の初期費用や追加の維持コストはかかりません※2。月々の発電量に応じたサービス利用料は発生しますが、割引プランの適用で節約も可能です。

また、オプションで余剰電力の売電が選べます。休日や就業時間後の電力使用量が少なくなるタイミングで余った余剰電力を売電すると、電気料金のさらなる削減効果を得ることが可能です

関西電力の太陽光発電設備は、工場や倉庫、大規模店舗の広い屋根や900㎡以上の折板屋根、カーポート、遊休地等、さまざまな場所に設置可能なので、ぜひご相談ください。

「割引プラン」 や、補助金の申請をサポートする 「補助金サポート」 等、お客さまにあわせて最適なプランをご提案します※3

ただし、オンサイトPPAのご提供には、設置目的場所の面積が900㎡以上必要なため、条件に合わないお客さまは、設置場所不要の太陽光発電 「コーポレートPPA」 をご検討ください。

オンサイトPPAやオフサイトPPAについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

  • 途中解約には違約金が発生します。
  • 故障時に保険金額を超える修理をお客さまが希望される場合等、追加料金が発生する場合もございます。
  • 割引プランは、補助金との併用はできません。

かかる費用や税金をふまえて農地の活用方法を検討しよう

農地は放置していると荒廃していき、トラブルやコストが負担になるおそれがあるので、不要なら売却するべきです。

しかし、農地の売却には法律による制限があり、現状では農地の購入者は少なく、実現するまでに時間と手間がかかります。使い道がなく農地売却に時間がかかる場合には、太陽光発電設備の導入もぜひ選択肢に加えてください。

太陽光発電設備を導入すれば、農地の荒廃を防ぎ、発電した電力を自社の工場やオフィスで使用することで電力使用量を削減できるので、電気料金を抑えることが可能です。

自社で所有する農地に太陽光発電を導入するなら 「太陽光発電オンサイトサービス」 を、設置スペースを持たない場合は 「コーポレートPPA」 をご検討ください。

近藤 元博(こんどう もとひろ)

監修者 近藤 元博(こんどう もとひろ)

愛知工業大学 総合技術研究所 教授
1987年トヨタ自動車に入社。分散型エネルギーシステム、高効率エネルギーシステムならびに新エネルギーシステムの開発、導入を推進。あわせて生産工程から排出する廃棄物や、使用済み車両のリサイクルなど幅広い分野で廃棄物の排出削減、有効利用技術の開発導入を推進。
「 リサイクル技術開発本多賞 」 「 化学工学会技術賞 」他エネルギーシステム、資源循環に関する表彰受賞。2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて資源問題、エネルギー問題に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 委員他

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