通勤災害とは?労災保険の適用範囲や条件、企業が行う手続きの流れを解説
2026.5.26
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- 通勤災害
目次
通勤中の事故やけがは、労災保険の対象となる「通勤災害」にあたる可能性があります。
ただし、すべての移動中の事故が対象になるわけではなく、認定には「就業に関する移動であること」や「合理的な経路・方法で行われていたこと」等の要件があります。
この記事では、通勤災害の基本的な考え方や業務災害との違い、認定基準を分かりやすく解説します。あわせて、万が一事故が起きた際に企業が行う手続きの流れや、対応時の注意点についても紹介します。通勤災害への対応を誤ると、労務トラブルや企業イメージの低下につながる可能性もあります。
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通勤災害とは?
通勤災害とは、労働者が通勤によって被った負傷、疾病、障害、または死亡※を指します。
ここでいう「通勤」とは、単なる移動全般ではなく、就業に関して行われる移動のことです。
そのため、会社に向かう途中や帰宅途中の事故であっても、すべてが通勤災害にあたるわけではありません。就業との関係があるか、合理的な経路・方法による移動だったかが判断のポイントとなります。詳しくは、「通勤災害の認定基準」で解説します。
通勤災害は、要件を満たせば労災保険の対象となります。
また、労災保険には、通勤中の災害を対象とする「通勤災害」のほかに、業務中の災害を対象とする「業務災害」もあります。次に、その違いを見ていきましょう。
「通勤災害」と「業務災害」の違いとは?
労災保険には、大きく分けて「業務災害」と「通勤災害」の2種類があります。両者の違いは、災害が発生した場面と、事業主の管理下にあったかどうかにあります。
| 区分 | 発生の場面 | 事業主の責任 | 給付の名称(例) |
|---|---|---|---|
| 業務災害 | 仕事そのものが原因で発生 | あり(事業主の管理下) | 療養補償給付 |
| 通勤災害 | 通勤(移動)中に発生 | なし(直接の責任はない) | 療養給付 |
業務災害は、仕事そのものが原因で起きた災害を指します。業務と傷病の間に因果関係(業務起因性)があり、会社の管理下で発生したものが対象です。言い換えれば、「この仕事をしていなければ、この災害は起きていなかった」と主張できるかどうかが判断の基準となります。
一方、通勤災害は、就業に関連する「移動中」に起きた災害を指します。例えば通勤電車の事故等は、会社側に直接の責任や過失があるわけではありません。そのため、事業主の管理下で起きる業務災害とは明確に区別して扱われます。
通勤の範囲
労災保険における「通勤」とは、単に自宅と会社を往復する移動だけを指すものではありません。就業に関して行われる移動であれば、一定の範囲で通勤として扱われます。
具体的には、通勤にあたる移動として、主に以下が挙げられます。
- ・住居と就業場所との往復
- ・就業場所から他の就業場所への移動
- ・住居と就業場所の往復に先行し、または後続する住居間の移動
それぞれの定義と注意点について確認していきます。
住居と就業場所の往復
住居と就業場所との間を往復する移動を指します。
ここでいう「住居」とは、単なる住所地ではなく、就業の拠点となる場所を指します。
例えば、家族が住む自宅とは別に、就業のために借りているアパートや、交通ストライキ、長時間残業等の理由でやむを得ず宿泊した会社近くのホテルも、「住居」とみなされます。
また、「就業場所」とは、業務を開始または終了する場所です。外勤業務等の場合は、自宅を出てから最初に立ち寄る用務先が開始場所となり、最後に立ち寄る用務先が終了場所となります。
就業場所から他の就業場所への移動
複数の事業場で働く労働者が、1つ目の職場での勤務を終えた後、2つ目の職場へ直接向かう際の移動を指します。
住居と就業場所の往復に先行し、または後続する住居間の移動
転任(転勤)に伴い家族と別居した労働者が、家族の住む自宅と赴任先の住居との間を移動する際の移動を指します。
この移動が認められるには、転任により従来の自宅からの通勤が困難になり、住居を移転したという実態が必要です。目安としては、片道60km以上等※により通勤が難しくなった場合が想定されます。原則として、就業日の当日やその前後に移動する場合が対象です。
いずれのケースでも、通勤の途中で私的な目的により経路を逸脱したり、移動を中断したりした場合は、原則として、その間およびその後の移動は通勤とは認められません。
一方で、日用品の購入や通院等、日常生活上必要な最小限の行為については、その用事をしている間は通勤から外れますが、用事を終えて合理的な経路に戻った後は、再び通勤として扱われます。
通勤災害の認定基準
では、実際にどのような場合に通勤災害と認められるのでしょうか。ここでは、通勤災害として認められるケースと、認められないケースの具体例を紹介します。
通勤災害として認められるケース
通勤災害として認められるのは、通勤の範囲を逸脱せず、就業に伴う移動や、日常生活上やむを得ない行為を含む移動である場合です。
具体的には、以下のようなケースが該当します。
| 認められる主なケース | 内容の詳細と認定のポイント |
|---|---|
| 業務に関連する引き返し | 忘れ物等の業務に関連する理由での引き返しは認められる(私物の置き忘れ等は除く) |
| 直行・直帰 | 自宅から得意先へ直接向かう、あるいは得意先から直帰する移動も通勤に含まれる |
| 退勤途中の生活に必要な最小限の行為 | 日用品の購入、職業訓練、選挙権の行使、病院等での診察・治療、一定の介護行為等のために立ち寄る行為は、最小限であれば認められる |
通勤災害として認められないケース
通常とは異なる「逸脱・中断」や、業務と関係ない私的な寄り道、不自然な経路での移動時には認められません。代表的な事例は以下のとおりです。
- ・飲み会やサークル活動等、私的な目的による移動中の事故
- ・著しい遠回りや、立ち入り禁止区域の通過等、合理性を欠く経路での事故
- ・業務と無関係な休日の移動中に起きた事故(※指示による休日出勤を除く)
このように、移動の目的が「就業」から離れた場合や、合理性を欠く経路を選択した場合には、補償を受けられない可能性が高まります。
通勤災害が起きた場合に企業が取るべき行動
通勤災害が発生した際は、企業に被災した従業員への適切な案内と、速やかな保険手続きが求められます。慌てず対応できるよう、基本的な流れをおさえておきましょう。
- ①従業員に医療機関の受診を促す
- ②医療機関を確認し、必要書類を作成する
- ③速やかに必要書類を提出する
①従業員に医療機関の受診を促す
まず、被災した従業員に対し、速やかに医療機関を受診するよう伝えます。その際は、以下の内容に沿って案内を進めましょう。
- ・基本は労災保険指定医療機関を受診する
通勤災害が予想される場合は、基本的に労災保険指定医療機関の受診を案内します。所定の手続きを行うことで、治療費をいったん全額立て替える負担を避けられます。 - ・労災保険指定医療機関が近くにない場合は、他の医療機関を受診する
適切な医療機関が付近にない場合は、近隣の医療機関を受診しても構いません。その場合は、医療機関の受付で「通勤災害の可能性がある」ことを伝え、健康保険証を提示せずに受診するよう案内してください。
②医療機関を確認し、必要書類を作成する
従業員から受診の報告を受けたら、企業は速やかに医療機関へ確認の電話を入れ、状況に応じた申請書類を作成します。
受診先の医療機関によって、給付方法や使用する様式が異なります。
| 区分 | 給付の内容 | 使用する様式と手続き |
|---|---|---|
| 労災保険指定医療機関 | 療養給付 | 「療養給付たる療養の給付請求書(様式第16号の3)」を医療機関へ提出する。 治療費は現物給付となるが、一定の自己負担が生じる場合がある。 |
| 労災保険指定外の医療機関 | 療養の費用の給付 | 「療養給付たる療養の費用請求書(様式第16号の5(1))」を労働基準監督署へ提出する。 従業員がいったん負担した治療費が、後日支給される。 |
- ※通勤災害の場合、給付の名称は「療養補償給付」ではなく「療養給付」となる
③速やかに必要書類を提出する
書類が完成したら、遅滞なく所轄の労働基準監督署または医療機関へ提出します。
一般に、通勤災害については、会社から労働基準監督署へ労働者死傷病報告を提出する必要はありません。ただし、会社が意図的に保険申請を拒んだり遅らせたりすることは、コンプライアンス違反にあたります。
従業員との信頼関係を損なうだけでなく、トラブルや紛争につながる可能性もあるため、誠実かつ迅速な対応を心がけましょう。
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通勤災害は、交通事故や体調不良等の日常的なリスクだけでなく、大規模な自然災害によって発生することもあります。通勤時間帯は全従業員が各地に分散しているため、こうした事態が起きた際に全員の安否を速やかに把握するのは容易ではありません。
万が一に備え、どこにいる従業員とも速やかに連絡を取れる体制を整えておくことは、企業防災の観点から重要です。
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また、手動配信にも対応しており、災害時だけでなく、感染症対応や特定部署への連絡、アンケート、会議の出欠確認等、平常時の連絡ツールとしても活用できます。
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通勤災害を正しく理解し、万が一に備えて企業防災を強化しよう
通勤災害は、正社員やパートに加え、新たに制度の対象となった一定のフリーランスを含め、働く人を支える大切な制度です。まずは、どのようなケースが補償の対象になるのか、その仕組みを正しく理解することが重要です。
万が一の際、企業には従業員がスムーズに補償を受けられるようサポートする役割があります。迅速かつ誠実な対応は、従業員の安心感につながるだけでなく、企業への信頼を築くことにも直結します。一方、対応が遅れたり不十分だったりすると、企業の評判を損ねるリスクもあります。
事故や災害は、いつどこで起こるか分かりません。万が一の際に従業員の安否を速やかに確認できるシステムを活用し、一歩進んだ企業防災に取り組むことも重要です。不測の事態でも迅速に動ける体制を整え、誰もがより安全に働ける環境づくりを推進していきましょう。
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監修者
関西電力株式会社 法人向けソリューションサイト 編集チーム
法人向けソリューション紹介サイトの企画・編集を担当。脱炭素やエネルギー分野をはじめ、企業の課題解決に資する情報を分かりやすく発信している。
サービス概要資料
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