非化石エネルギーとは?非化石証書の種類やメリット、購入方法を徹底解説
2025.1.9
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目次
環境や社会に配慮したESG経営を実現するために、脱炭素を考えている企業の担当者もいるでしょう。そこで近年注目されているのが、非化石エネルギーです。自社でCO₂排出量の少ない電気を使うために、非化石証書を活用する企業もあります。
この記事では、非化石エネルギーや非化石証書について解説します。非化石エネルギーに関する基礎知識から、非化石証書を購入する方法やメリット、注意点まで紹介するので、ぜひ参考にしてください。
非化石エネルギーとは
非化石エネルギーとは、石油や石炭、天然ガス等の化石燃料以外で、利用時に二酸化炭素の排出がないエネルギーのことです。再生可能エネルギーや原子力発電等が、非化石エネルギーに含まれます。
非化石エネルギーを使うと、発電時にCO₂が排出されないため、地球温暖化防止に役立ちます。そのため、非化石エネルギーは環境価値があるエネルギー源と位置付けられています。
非化石証書とは
非化石証書とは、非化石エネルギーから作られた電気が持っている環境価値を証書にしたものです。
化石燃料による発電でも非化石エネルギーによる発電でも、作られたものが電気である点に変わりはありません。そして、どちらも同じ電気である以上、非化石エネルギーで発電した電気だけを限定して購入することは一般的にはできません。
そこで、「地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出しない」という付加価値を「環境価値」として電気自体の価値から切り離し、非化石証書として扱うことで、環境価値を直接購入できるようになりました。
例えば、再生可能エネルギーで100kWh発電したら、100kWh分の電気と100kWh分の環境価値が生まれます。100kWh分の環境価値を電気そのものの価値から切り離して、非化石証書として取引することが可能です。
非化石証書を購入すると、自社で使用している電気が化石燃料以外の方法で発電された環境にやさしい電気だと証明できます。
非化石証書が導入された目的
非化石証書が導入された目的は、次のとおりです。
- ●高度化法の目標を見直すため
- ●再エネ賦課金の負担軽減のため
高度化法の目標を見直すため
非化石証書を取引する制度が導入された背景として、まず 「エネルギー供給事業者によるエネルギー源の環境適合利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」(以下、高度化法)の存在があります※。
高度化法では、小売電気事業者に対して、2030年までに非化石電源を44%以上にする目標を定めています。しかし、非化石電源を持たない事業者や、発電所を有しておらず取引所を利用する小売電気事業者にとっては、目標達成が難しいです。
そこで、非化石証書の制度を導入し、設備投資をしなくても非化石エネルギーの割合を高められるようにしました。
再生可能エネルギー発電促進賦課金の負担軽減のため
非化石証書の活用によって、再生可能エネルギー発電促進賦課金(以下、再エネ賦課金)の負担が軽減される可能性があります。
再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)によって電力会社が買い取りに要した費用は、再エネ賦課金として需要家(電気を使用する人)が負担すると決められています。つまり、再生可能エネルギーのような非化石エネルギーでの発電によって発生した環境価値は、需要家に配分されているといえます。
非化石証書で非化石エネルギーの環境価値を購入できるようになれば、その売上によってFIT賦課金の負担が軽減されます。環境価値を求める企業が非化石証書にお金を払えば、国民の再エネ賦課金負担の軽減が期待できます。
非化石証書の購入は非化石価値取引市場で行う
非化石証書を購入するためには、非化石価値取引市場を利用する必要があります。非化石価値取引市場の創設が決定されたのは2017年で、2018年5月に一般社団法人日本卸電力取引所(JEPX)によって開設されました。
開設当初は発電事業者と電力会社のみが非化石証書の売買に参加できる仕組みでしたが、2021年からは非化石証書の種類によっては、条件を満たした需要家も参加できるようになりました。
非化石価値取引市場には、需要家が非化石証書を直接購入できる「再エネ価値取引市場」と、小売電気事業者が高度化法の義務を達成するために非化石証書を購入できる「高度化義務達成市場」があります。
非化石証書の種類
非化石証書は、FIT非化石証書(再エネ指定)、非FIT非化石証書(再エネ指定)、非FIT非化石証書(再エネ指定なし)の3種類があります。それぞれの特徴について、詳しく確認しましょう。
種類 | FIT非化石証書 (再エネ指定) |
非FIT非化石証書 (再エネ指定) |
非FIT非化石証書 (再エネ指定なし) |
---|---|---|---|
由来する電源 | FIT電源 | 大型水力、卒FIT電源、バイオマス | 原子力、ごみ発電(廃プラ) |
オークション形式 | マルチプライスオークション | シングルプライスオークション | |
証書購入主体 | 小売電気事業者 需要家 仲介事業者 |
小売電気事業者 |
- ※出典:経済産業省資源エネルギー庁「非化石価値取引について」より作成
FIT非化石証書
FIT非化石証書は、再エネ価値取引市場で取引される証書です。取引対象はFIT電源であり、再生可能エネルギーで作られた電気を使いたいという需要家のニーズに対応しています。
再エネ価値取引市場のオークション形式はマルチプライスオークションで、小売電気事業者の入札価格によってFIT非化石証書の金額が決まります。FIT非化石証書の最高価格は4.0円/kWhで、最低価格は0.4円/kWhです。
非FIT非化石証書(再エネ指定)
非FIT非化石証書(再エネ指定)は、高度化法義務達成市場で取引されます。取引対象は大型水力や卒FIT電源、バイオマス等です。
高度化法義務達成市場のオークション形式はシングルプライスオークションで、すべての参加者が約定価格で取引します。非FIT非化石証書(再エネ指定)の最高価格は1.3円/kWhで、最低価格は0.6円/kWhです※。
基本的に非FIT非化石証書(再エネ指定)の購入対象者は小売電気事業者のみですが、一定の条件を満たすと需要家も購入できます。
非FIT非化石証書(再エネ指定なし)
非FIT非化石証書(再エネ指定なし)は、高度化法義務達成市場で取引される証書です。取引対象は原子力やごみ発電等、再生可能エネルギーに当てはまらないものの非化石のエネルギー源であり、今後は水素等の導入も検討されています。
高度化法義務達成市場のオークション形式はシングルプライスオークションで、すべての参加者が約定価格で取引します。非FIT非化石証書(再エネ指定なし)の最高価格は1.3円/kWhで、最低価格は0.6円/kWhです※。
FIT証書は2021年からトラッキングを開始
2021年の再エネ価値取引市場の創設にあわせて、FIT証書は全量トラッキング化され、非FIT証書も順次トラッキング化が進められています。
トラッキングとは、再生可能エネルギーの電源種類や発電所の所在地等を示す情報です。後ほど解説するRE100への参加等には、トラッキング情報が付与された証書が必要とされています。
そのため、需要家からのニーズが高く、FIT証書のトラッキング化が求められました。今後もトラッキング情報を付与した証書の増加が見込まれています。
企業が非化石証書を購入するメリット
企業が非化石証書を購入するメリットは、以下のとおりです。
- ●企業活動に環境負荷の低い電力を活用しているとアピールできる
- ●RE100等の企業連合への加盟につながる
企業活動に環境負荷の低い電力を活用しているとアピールできる
非化石証書を購入することで、環境に配慮した経営をしているとアピールできます。
CO₂削減が重要課題となっている昨今では、機関投資家や金融機関が投資先企業の企業価値を判断する際に、気候変動への対応を行っているかどうかを確認しています。これはESG投資と呼ばれ、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)という非財務情報を考慮して行われる投資です。
企業が環境改善に取り組むことで企業価値があると評価され、投資先として選ばれる可能性が高まります。非化石証書を購入すると、その分の電力はCO₂排出量ゼロとみなされるため、CO₂排出量削減に取り組んでいるとアピールできます。
環境改善に取り組む企業であるという姿勢を見せ、企業価値を高めたい場合に非化石証書は有効です。
RE100等の企業連合への加盟につながる
非化石証書を購入すると、CO₂排出量が少なくなったとみなされるので、RE100等の申請に活用できます。RE100とは2014年に結成され、事業で用いる電力の100%を再生可能エネルギー由来の電力で賄うことを目標としている企業連合です※。
RE100は国際的な組織であり、ESG投資において世界に向けてアピールできる等のメリットがあります。
事業全体を通じて100%再エネ化にコミットする、もしくはすでに再エネ化を達成している等の認定要件を満たすことで、RE100に参加することが可能です。非化石証書を購入することで、再エネ調達目標達成に活用できるので、RE100の要件を満たしやすくなります。
RE100に活用できる非化石証書は、政府によってトラッキングされた属性が付与されているものに限ります。
非化石証書・グリーン電力証書・J-クレジットの違い
RE100に活用できる日本の再エネ証書には、非化石証書のほかにグリーン電力証書、J-クレジットがあります。
非化石証書 |
|
---|---|
グリーン電力証書 |
|
J-クレジット |
|
グリーン電力証書やJ-クレジットも、非化石証書と同様に環境価値だけを購入できるので、従来の電力契約を変更しなくていいのがメリットです。ただし、証書の供給量が非化石証書に比べて少ないのはデメリットといえます。
非化石証書の購入方法
非化石証書の購入は、一般社団法人 日本卸電力取引所(JEPX)の非化石価値取引を利用して行います。非化石価値取引を利用するためには、非化石価値取引の会員にならなければいけません。
会員になるためには年会費が必要で、2024年度の年会費は、60万円(不課税)です。会員登録の際は、代表者を申請して銀行口座を登録するため、各種様式を提出する必要があります。入会手続きを希望する場合は、日本卸電力取引所事務局(03-5765-5477)に直接相談となります。
また、非化石価値取引には手数料がかかります。2024年度は非化石価値売買手数料が0.001円/kWh(税抜)で、2023年度までは非化石価値販売証書発行手数料もかかっていました。
非化石証書の購入には、非化石価値取引システムを利用します。システムの利用ガイドはJEPXのWebサイトに掲載されているため、見ながら操作が可能です。
非化石証書を活用する際の注意点
非化石証書を活用することで企業は大きなメリットを得られますが、いくつかの注意点もあるため確認する必要があります。
- ●取引価格の変動がある
- ●種類や産地によっては自社の取り組みに適さないものがある
- ●使用期限がある
取引価格の変動がある
非化石証書は、いずれもオークション形式で取引価格が変動します。最高価格は決められていますが、最低価格も決まっているため、最低価格以下の単価では取引できません。
さらに、非化石証書の取引には購入費用だけでなく、手数料等の費用が別途発生します。企業の評価を高めるために非化石証書を利用したいと考えても、予算の都合で活用できないケースはあるでしょう。
種類や産地によっては自社の取り組みに適さないものがある
非化石証書を購入する際は、発電に使用されているエネルギーの種類を確認する必要があります。
非化石証書にはFIT証書と非FIT証書(再エネ指定)、非FIT証書(再エネ指定なし)の3種類があり、それぞれ由来する電源が異なります。例えば、再生可能エネルギーが使われた非化石証書を購入したい場合は、原子力やごみ発電等に由来する非FIT証書(再エネ指定なし)を選んではいけません。
また、特定の自治体との連携をアピールしたい場合は、特定の自治体で供給されたと証明できるトラッキング付きの非化石証書を選ぶ必要があります。
使用期限がある
非化石証書には使用期限があるため、期限内に活用しなければなりません。
非化石証書の有効期限は、6月末までです。非化石証書の取引は8月、11月、2月、5月に行われますが、5月に証書を取得しても有効期限は6月末までなので、計画的に取得しなければ損をしたと感じてしまうこともあるでしょう。
関西電力の「おまかSave-Air®」で空調から省エネを考えよう
非化石証書を活用すると、CO₂を排出しないクリーンなエネルギーを使っている企業だとアピールできます。しかし、企業がCO₂削減に取り組むのであれば、実際にエネルギーの使い方を見直すことも大切です。
例えば、建物や店舗のエネルギー使用量の約40〜50%※1を占める空調設備の使い方を見直すことで、CO₂削減につながります。しかし、空調設備を使わないようにすると、快適性が損なわれてしまいます。
そこで、快適性を損なわずに省エネを目指せる空調制御サービスを利用するのがおすすめです。関西電力の「おまかSave-Air®」は、エアコンの室外機に制御用コンピューターを取り付けるだけで手軽に導入できる空調制御サービスです。快適性が損なわれると判断した場合は制御を緩和するため、快適性を維持しながら省エネを実現できます。特徴は以下のとおりです。
関西電力の「おまかSave-Air®」の特徴
- ●初期費用ゼロ・安価な月額料金でサービスの導入が可能
- ●電力使用量と最大電力を抑制することで電気料金を10〜20%削減※2
- ●工事にかかる期間は2〜3日程度、既存の室外機に後付けするのみで改修工事も不要※3
- ●ダイキン工業・日立・三菱電機等の国内主要空調メーカーに対応しており※4、メーカー保証も継続
- ●最短数ヶ月〜半年前後で調査・提案・導入とスピーディな対応が可能※5
「おまかSave-Air®」は関西電力が提供するサービスですが、全国で利用できます。導入効果について詳しく知りたい方は、以下をチェックしてみてください。
- 出典:経済産業省 資源エネルギー庁「夏季の省エネ・節電メニュー(事業者の皆様)」
- 一定条件に基づく効果であり、削減を保証するものではありません。
- 設置状況等により一部室内工事が発生する可能性があります。
- 一部対象外の機器があります。
- 初回契約は原則6年、初回契約終了後は1年毎の自動更新となります。また、お客さまのご都合で解約いただく場合には、解約金をいただきます。
非化石証書の仕組みやメリットを理解して環境にやさしい経営をしよう
非化石証書を活用すると、環境にやさしい経営をする企業だとアピールできます。CO₂排出量を削減したいと考えている企業担当者の方は、非化石証書の活用を検討してみてください。
自社のCO₂排出量を抑えたいなら、エネルギー使用量の多い空調設備に注目してみるのもおすすめです。関西電力の「おまかSave-Air®」のように、エアコンの室外機に制御用コンピューターを取り付けるだけで快適性と省エネを両立できるシステムもあります。
監修者 近藤 元博(こんどう もとひろ)
愛知工業大学 総合技術研究所 教授
1987年トヨタ自動車に入社。分散型エネルギーシステム、高効率エネルギーシステムならびに新エネルギーシステムの開発、導入を推進。あわせて生産工程から排出する廃棄物や、使用済み車両のリサイクル等幅広い分野で廃棄物の排出削減、有効利用技術の開発導入を推進。
「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」他エネルギーシステム、資源循環に関する表彰受賞。2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて資源問題、エネルギー問題に取り組み中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 委員他
サービス概要資料
おまかSave-Air®
エネルギーコスト削減、脱炭素に向けた取り組みのために、まず始めるべきは「空調の省エネ」です。現在お使いの空調機に制御用コンピューターを取り付けるだけで、省エネと快適性の両立ができる全く新しいサービスです。
資料の一部をご紹介
- これまでの空調省エネの課題
- おまかSave-Air®の概要
- 導入効果
- サービス料金
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