気候変動への対応に関する基本用語集法令・制度・施策
省エネ法
正式名称は 「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」 です。石油危機を契機に1979年に制定されました。エネルギー使用者への直接的・間接的な規制を行います。
温対法
正式名称は 「地球温暖化対策の推進に関する法律」 です。地球温暖化対策の推進を図るための枠組みを定めた法律で、2005年改正により温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度が導入されています。
温対法に基づき、政府は地球温暖化対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、我が国唯一の地球温暖化に関する総合計画である 「地球温暖化対策計画」 を策定しています。2021年10月に 「2050年カーボンニュートラル」、「2030年度における温室効果ガスの46%削減」 の実現に向け、本計画を改定。温室効果ガスの排出削減・吸収の量に関する目標、目標達成のために国、地方公共団体、事業者および国民が講ずべき対策・施策について記載されています。主な対策・施策としては、住宅や建築物の省エネ基準への適合義務拡大や、2030年度までに100以上の 「脱炭素先行地域」 を創出 (地域脱炭素ロードマップ) 等が挙げられます。
エネルギー供給構造高度化法
正式名称は 「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」 です。小売電気事業者に低炭素な非化石電源の調達を求めており、2030年度に販売する電力のうち非化石電源が占める割合を44%以上とすることとされています。
エネルギー供給強靭化法
正式名称は 「強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」 です。電気事業法やFIT法 (再生可能エネルギー特別措置法) 等の改正を盛り込み2020年6月に成立しました。
再生可能エネルギーの導入拡大と国民負担の軽減を目指し、一部電源を市場連動型の支援制度に移行させること等が施策の柱で、2022年4月に施行される見込みです。
エネルギー基本計画
2002年6月に制定されたエネルギー政策基本法に基づき、政府が策定する計画で、「安全性 (Safety) 」、「安定供給 (Energy Security) 」、「経済効率性の向上 (Economic Efficiency) 」、「環境への適合 (Environment) 」 というS+3Eを重視する基本方針に則り、エネルギー政策の基本的な方向性を示すものです。
脱炭素化に向けた世界的な潮流、国際的なエネルギー安全保障における緊張感の高まり等の2018年の第5次エネルギー基本計画策定時からのエネルギーをめぐる情勢変化や日本のエネルギー需給構造が抱えるさまざまな課題を踏まえ2021年10月、新たに第6次エネルギー基本計画が策定されました。
第6次エネルギー基本計画は、以下の2点を重要なテーマとして策定されています。
- ① 2020年10月に表明された 「2050年カーボンニュートラル」 や2021年4月に表明された新たな温室効果ガス排出削減目標の実現に向けたエネルギー政策の道筋を示すこと
- ② 気候変動対策を進めながら、日本のエネルギー需給構造が抱える課題の克服に向け、安全性の確保を大前提に安定供給の確保やエネルギーコストの低減に向けた取り組みを示すこと
カーボンプライシング
排出される二酸化炭素 (CO₂) に価格付けする温暖化対策のための仕組みです。CO₂の排出量に応じて、企業や家庭に金銭的なコストを負担してもらうことで、CO₂排出のより少ない行動を合理的に選んでもらうことを目的として日本での活用が検討されています。検討されている制度のうち代表的なものとして、「炭素税」 があります。これは企業等に対しCO₂の排出量に応じて課税するものです。日本でも実質的な 「炭素税」 である 「地球温暖化対策税」 が2012年から導入されています。
また、「排出量取引制度」 は、企業等が排出できるCO₂の上限を決め、上限を超える企業が上限に達していない企業から必要な分を買い取る制度です。日本でも東京都や埼玉県等一部の地域ですでに運用されています。
インターナルカーボンプライシング
政府によるカーボンプライシングとは別に、民間企業による自主的な取組みとして、事業者が任意で見積もる二酸化炭素 (CO₂) 排出量に対する価格であり、企業の低炭素投資、対策を推進する仕組みです。
インターナルカーボンプライシング(ICP)の活用方法としては、次の①~③のように分類されます。
- ① 投資基準として用いる
ICPより低コスト (例 : クレジットを購入するより安く削減できる) の場合、低炭素投資を実行する - ② 投資基準の補正に用いる
例 : ICP×CO₂削減量を投資額から減額することで、低炭素投資を実行しやすくする - ③ 低炭素投資の原資とする
ICP×CO₂排出量を社内より実際に徴収し、低炭素投資に回す
CFP
Carbon Footprint of Products の略で、商品やサービスの原材料調達から廃棄、リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量を二酸化炭素 (CO₂) に換算して、商品やサービスに分かりやすく表示する仕組みです。LCA (ライフサイクルアセスメント) 手法を活用し、環境負荷を定量的に算定します。
LCA
Life Cycle Assessmentの略で、商品やサービスの原料調達から、廃棄、リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通しての環境負荷を定量的に算定する手法のことです。一般的には、製品やサービス等にかかわる、原料の調達から製造、流通、使用、廃棄、リサイクルに至る 「製品のライフサイクル」 全体を対象として、各段階の資源やエネルギーの投入量とさまざまな排出物の量を定量的に把握し、これらによるさまざまな環境影響や資源・エネルギーの枯渇への影響等を客観的に可能な限り定量化し、これらの分析・評価に基づいて環境改善等に向けた意思決定を支援するための科学的・客観的な根拠を与え得る手法です。国際標準化機構 (ISO) では、ライフサイクル評価の実施事例の増加に伴い、その共通基盤を確立することが望ましいと判断し、評価手法の規格化を行っています。(ISO14040、ISO14044)
2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略
2050年カーボンニュートラル社会の実現に向け、経済産業省が中心となり、2020年12月に関係省庁と連携して策定。「経済と環境の好循環」 を作っていく産業政策と位置付けています。
2021年6月に内容がさらに具体化され、14の重要分野ごとに、高い目標を掲げたうえで、現状の課題と今後の取組みを明記し、予算、税、規制改革・標準化、国際連携等、あらゆる政策を盛り込んだ実行計画となっています。
クリーンエネルギー戦略
温暖化対策を経済成長につなげる戦略のことです。脱炭素を見据え、将来にわたって安定的で安価なエネルギー供給を確保するための具体策を示します。
供給サイドに加えて、産業など需要サイドの各分野でのエネルギー転換の方策も検討予定です。
事業者それぞれ 、 国民一人一人が仕事のやり方、自分の強み、生活スタイルを炭素中立型に転換していくための具体的な道筋を示し、経済・社会全体の大変革を実現することをコンセプトとしています。
経済産業省は2022年6月を目途に取りまとめる予定です。
GXリーグ
ゼロカーボン社会に向けた経済社会システム全体の変革 (GX:グリーントランスフォーメーション) を積極的に取り組む企業群が官・学・金でGXに向けた挑戦を行うプレイヤーとともに、一体として実現に向けた議論と新たな市場の創造に向けた実践を行う場。
2022年2月、経済産業省はGXリーグ基本構想を公表しました。
地域脱炭素ロードマップ
政府が開催する 「国・地方脱炭素実現会議」 にて、2050年脱炭素社会実現に向け決定されたロードマップであり、地域課題を解決し、地域の魅力と質を向上させる地方創生に資する脱炭素に国全体で取り組み、さらに世界へと広げるために、特に2030年までに集中して行う取組み・施策を中心に地域の成長戦略ともなる地域脱炭素の行程と具体策を示すとされています。具体的な取組みについては 「脱炭素先行地域をつくる」 として2030年までに少なくとも脱炭素先行地域を100か所以上創出し、2025年度までに、脱炭素に向かう地域特性等に応じた先行的な取組み実施の道筋をつけ、2030年度までに実行するとされており、また 「脱炭素の基盤となる重点対策の全国実施」 として、自家消費型の太陽光発電、住宅・建築物の省エネ、ゼロカーボン・ドライブ等の脱炭素の基盤となる重点対策について、地方自治体・地域企業・市民など地域の関係者が主体となって、国も積極的に支援しながら、各地の創意工夫を横展開し、脱炭素先行地域を含めて、全国津々浦々で実施するとされています。
ゼロカーボンシティ
2050年に温室効果ガスの排出量または二酸化炭素 (CO₂) 排出量の実質ゼロを目指すことを表明した地方自治体のことを指します。
2022年1月現在、534の自治体が表明しています。
FIT/非FIT
Feed-in Tariff (再生可能エネルギーの固定価格買取制度) の略で、一般家庭や事業者が再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が買い取ることを国が約束する制度です。国内での再生可能エネルギーによる発電の普及を目的としており、日本では 「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法 (FIT法) 」 に基づき2012年7月に開始しました。発電方法や電力量によって定められた期間中は、単価を変えることなく電力会社が買い取ることが義務付けられています。対象は、「太陽光」「風力」「水力」「地熱」「バイオマス」 の5つのいずれかを使い、国が定める要件を満たす事業計画を策定し、その計画に基づいて新たに発電を始めるものです。
既設の発電設備等、FIT対象とならないものを非FITと呼びます。
PPA
Power Purchase Agreement (電力購入契約) の略で、発電事業者から電力を調達するために締結する契約を指します。企業や自治体等の需要家が発電事業者から直接電力を購入するための契約をコーポレートPPAと呼び、世界的に採用が増加しています。電力系統を介する場合、日本では2021年11月より電力・環境価値をセットで取引する場合 (フィジカルPPA) に限り、需要家と発電事業者がPPAを直接契約できるようになりました。(それ以外は小売電気事業者の仲介が必要となります。)
需要家にとっては発電事業者と契約することで、再エネ電気 (電気+証書) の長期・定額購入が可能となり、再エネの安定調達、電気代の固定化につながります。また、発電事業者にとっては、再エネ電気を長期・定額で購入してもらうことで、価格変動のある電力市場に卸す場合と比べて、事業の予見性を高めることができます。このような理由からFIT制度の代わりに再エネ導入を支える仕組みとして普及が進んでいます。
ZEB/ZEH/ZEH+
ZEB (ゼブ) はNet Zero Energy Buildingの略で、先進的な建築設計によるエネルギー負荷の抑制やパッシブ技術の採用による自然エネルギーの積極的な活用、高効率な設備システム (ヒートポンプ給湯機をはじめとする高効率給湯設備等) の導入等により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギー化を実現したうえで、再生可能エネルギーを導入することにより、エネルギー自立度を極力高め、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した建築物のことです。
ZEH (ゼッチ) はNet Zero Energy Houseの略で、外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システム (ヒートポンプ給湯機をはじめとする高効率給湯設備等) の導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現したうえで、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した住宅のことです。現行のZEHより省エネをさらに深堀りするとともに、再エネ等のさらなる自家消費拡大を図り、需給一体型を目指したZEHをZEH + (ゼッチプラス) と呼びます。