税務調査とはいったい何なのか?そんなに怖いものなのか?

「厳しい取り調べ」「マルサがやってくる…」は完全に誤解です!

「税務調査」の四文字を恐れる経営者の方は、非常に多くいらっしゃいます。それは、調査の結果によっては、多額の追徴課税や重加算税を課される…という不安が頭をよぎることが原因と思われます。そしてもう一つ、「税務調査を受ける」ということは、「警察の取り調べを受ける」のと同じようなもの…とイメージしてしまうからかもしれません。
最初にお伝えしておきますが、税務調査を行うのは、「国税調査官」という税務署員です。そして、税務調査とは、会社の帳簿などの内容をたしかめて、「税金の計算に間違いがないか?」を確認する作業のことです。さらに言えば、国税調査官は、税務署への申告内容が正しいかどうかをチェックする役割を担っているのであって、会社や経営者について厳しい取り調べをするわけではありませんから、「国税調査官=怖い人」でもありません。
黒っぽいスーツを着た厳しい面持ちの団体が、裁判所の令状を持って会社に突然乗り込んできて、有無を言わさず会社のあらゆる書類などを押収していく…そういった場面を、テレビや映画などで見たことがあると思います。あれは一般的な「税務調査」ではなく、「強制調査」と呼ばれるものです。強制調査の対象となるのは、脱税などの悪いことをしている会社です。また、厳しい面持ちで書類を押収していく人たちこそが「国税査察官」、いわゆる「マルサ」であり、彼らが一般的な会社の税務調査に来ることは、ほとんどありません。
一般的な税務調査は、「任意調査」と呼ばれるもので、通常は1~2週間前に税務署から「帳簿を確認させて欲しいのですが…」といった内容の事前連絡があり、日程調整をしてから行われます。経営者の都合に合わせて、日程を調整することにも応じてもらえますし、「ガサ入れ」のような荒っぽいことをされることもありません。予告なく行われる「無予告調査」というものもありますが、その場合でも原則として日程調整は可能です。
また、税務調査に関する法律「国税通則法第74条の8(権限の解釈)」には、「第74条の2から前条まで(当該職員の質問検査権等)の規定による当該職員の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」と明記されています。これは、「税務調査は犯罪調査ではないため、会社や経営者が脱税をしているかのように扱ってはならない」ということですから、税務調査を受けることが、“犯罪者扱い”を受けることにはなりません。
ここまでの説明でお分かりいただけたと思いますが、税務調査への恐怖心というものは、不確かな情報をもとにしたイメージが原因であって、本来は怖がる必要などないのです。

どんなときに税務調査に入られるのか?何か基準があるのか?

税務調査にまつわる様々な「噂」を耳にしたことがあると思います。たとえば…

  • 会社の規模が小さいと、税務調査に入られない
  • 赤字の会社からお金を取れないから、税務調査は関係ない
  • 10年以上も税務調査が入っていないから、今後も入らない
  • 顧問税理士がいない会社は税務調査が入りやすい
  • 会社の規模が小さいと、税務調査に入られない
  • 売上や利益が急激に増えた(減った)会社は税務調査が入りやすい

上で挙げたような「噂」は、あくまで「噂」に過ぎません。しかし、税務調査が入りやすい会社の「傾向」というものはたしかにあります。最後に挙げた「売上や利益が急激に増えた(減った)会社は、税務調査が入りやすい」というのは、その通りと言っても良いかもしれません。

そのほかに、「税務調査が入りやすい会社」の傾向をいくつか挙げてみると…

  • 土地や建物などの売買を行った
  • 大規模な設備投資を行った
  • 多額の退職金の支払いがあった
  • 設立から3~5年目に差し掛かった
  • 長い間、税務調査を受けていなかった

上の3つを見ると何となくお分かりになると思いますが、税務署から「目を付けられやすい」のは、「大きなお金の動きがあった会社」です。では、税務署は全国にある300万とも400万とも言われる会社のお金の動きを、一つひとつチェックしているのでしょうか?
平成13年から、全国の国税局や税務署を結ぶ「KSKシステム(国税総合管理システム)」によって、納税に関するあらゆるデータが一元管理されるようになっています。税務署はこのKSKシステムを利用して、全ての会社の経費項目をチェックしているのです。
KSKシステムでは、会社や業界ごとに一定の基準となる数値が設定されており、その基準を大きく超えるお金の動きがあった場合、「異常」として国税調査官に報告します。システムからの報告を受けた国税調査官は、数字の動きをしっかりと見極めたうえで、税務調査を実施するか否かの判断を下します。
「この会社、売上が順調に伸びてるから、一度確認させてもらおう」「こんなお金の動きはオカシイ!何かやっているに違いない…」そんなふうに、国税調査官の目に止まった会社に税務調査が入るようになっているので、「こうすれば絶対に税務調査に入られない」というたしかな方法はないのです。
したがって、「どうすれば税務調査に入られないようにできるのだろう?」「税務調査に入られたらどうしよう?」などと考えるよりも、普段から「いつ調査に入られても大丈夫!」という状態にしておくことが大切になります。

税務調査にかかる期間は?どんなことをするのか?

税務調査は通常、2~3日かけて行われます。会社の規模などによって変わることもありますが、「数時間で簡単に…」といったことは滅多にありません。また、調査中に何らかの問題が出た場合には、税務調査にかかる日数は伸びていきます。なお、通常の税務調査なら日程調整が可能ですから、できる限り業務に差し支えがない日に調査を受けるようにしましょう。
税務調査が始まるのは午前10時頃からが多く、昼休憩を挟んで、15時~16時頃まで続きます。まずは「事業概況」のヒアリングから始まることが多いのですが、それは国税調査官が調査を始めるにあたって、会社設立の経緯や事業内容などの基本事項を理解しておくために行われるものです。このとき、雑談をしながらでも、国税調査官は経営者の人柄や性格についても把握しようとしていますので、落ち着いて対応することが大切です。
ヒアリングが終わると、いよいよ「帳簿のチェック」が始まります。黙々と帳簿のチェックを続けてくれるのなら良いのですが、そういう訳にはいきません。帳簿の内容に疑問を抱いた国税調査官から、矢継ぎ早に質問が飛んできます。

「この取引で交わされた契約書を見せてください」
「役員になっている奥様の仕事内容を教えてください」
「この売上は4月ではなく、3月ではないですか?」
「従業員の給与がわかる資料を見せてください」
「この日の接待の相手はどなたですか?」

上記のような細かいことを色々と質問されますが、落ち着いて、できるだけ端的に回答するようにしてください。よくわからないから…といって、いい加減な回答をしたりすると、後で大変なことになってしまいます。何と答えればよいかわからない場合は、「きちんと調べてから回答します」と言えば済むことです。国税調査官との一つひとつのやり取りは、税務調査の結果を大きく左右するポイントになりますので、とにかく慎重に…。
後編では「税務調査の際に絶対にやってはいけないこと」を中心に解説します。

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