公共事業の担い手として電力の安定供給に貢献したい
電源Ⅰ’厳気象対応調整力公募に参加を決めた最大の理由は、社会に貢献する責任を果たしたいという思いでした。白浜町水道事業は、白浜町内および、隣接する田辺市の一部に毎日約30,000m3を超える水道水を供給し、町民約2万1,000人の生活や、多くの観光客が訪れる宿泊施設・レジャー施設の運営を支えています。上水道と同じく電力も町民の生活になくてはならないライフラインです。電力の安定供給の役に立つことも、公共事業の担い手としての使命の一つだと考えました。
加えて、DR取引契約による基本報酬や、DR発動時に使用電力量を抑制することによる従量報酬が得られることも、メリットに感じた点でした。
関西電力のサポートと 「K-VIPs」 により安心して参加
当初懸念したのは、電力の需給調整に応じることで肝心の水道事業に支障を来さないかということでした。しかし、関西電力から水道水の供給に影響のない範囲で対応可能な提案を受けたことに加え、停止する設備の選定から試行運用まで丁寧なサポートを受けたおかげで不安を感じることはまったくありませんでした。さらに関西電力の 「K-VIPs」 を導入したことで、安心感はより大きなものとなりました。
白浜町水道事業では、中核拠点である平浄水場から2ヵ所の配水池に水道水を送り、そこから直接または各配水池を経由して、町内の広範囲における地域に配水しています。検討の末、DR発動時には、一番容量の大きい配水池への送水ポンプを停止し、使用電力量を抑制することを決めました。配水池では常時一定量を貯水しているため、水道水の供給を滞らせることなく地域の電力供給バランスの調整に貢献できます。
DRを 「見える化」 することが契約達成を後押し
2020年度の電源Ⅰ’の契約を締結し、4月から運用を開始しました。まずメリットを感じたのが、「K-VIPs」 の導入によってベースライン(※)や使用電力量を 「見える化」 できること。平浄水場では、これまで中央監視装置で配水池も含めてすべての送水施設の使用電力量を監視し、データを集計していましたが、リアルタイムで使用電力量やベースラインを確認する仕組みはありませんでした。DR発動時のkW供出実績は、ベースラインからどれだけ負荷を抑制できたかによって評価されます。「K-VIPs」 によって、ベースラインとともにDRの達成率を一目で確認できます。猛暑が続いた2020年の夏、電力需給がひっ迫しそうに感じた時には、「DR発動があるかもしれない」 と意識し、「K-VIPs」 上で案内されている 「でんき予報」 をこまめに確認するようにしていました。
また夏季は町内の水使用量も増加します。使用電力量がリアルタイムで連携されるため、こまめにデマンド値を確認して送水ポンプの稼働台数や時間帯を工夫し、使用電力量を制御することが、電力料金の削減にもつながっています。
※ベースラインとは、DR発動がなかった場合に想定される電力需要量をいい、発動時は、このベースラインが達成状況把握の基準になります。
事業に支障を来すことなくスムーズにDRに対応
DRの発動時は、発動の3時間前にアグリゲーターの関西電力からメールで指令の連絡を受けました。発動の開始時間前に、配水池に送水を終えるなど発動に備え、3時間にわたるDRを実施。事前に関西電力と発動時の訓練を行い、手順を習得していたおかげで、初めての発動にも戸惑うことなくスムーズに対応できました。
平浄水場では交代勤務制を取っており、夜間や休祝日など業務時間外でも常に担当者が中央監視装置による監視や、町民からの水道に関する電話に対応しています。そのためたとえ業務時間外にDRが発動されても対応が可能です。業務を遂行しながら無理なく電力需給のバランス調整に貢献できると実感しています。
「K-VIPs」 を活用し、観光の町・白浜町で社会に貢献していく
白浜町は年間約360万人もの観光客が訪れ、観光関連事業を主な産業としている町です。白浜温泉は、兵庫県の有馬温泉、愛媛県の道後温泉と並んで日本の三古湯の一つに挙げられ、日本書紀や万葉集、続日本紀に 「牟婁温泉」 や 「紀温湯」 の名で登場するなど歴史と名声を誇ります。また大勢の海水浴客で賑わう白良浜や、ジャイアントパンダで有名なテーマパーク・アドベンチャーワールドといったレジャースポットも充実しています。
今後多くの観光客を迎えるためにも、水道水の安定供給という役割を果たしながら、「K-VIPs」 を活用してDRへの対応による電力の安定供給や、効率的な電力使用に取り組み、社会に貢献していきたいと考えています。