大松工業株式会社さま

問題の見つけ方も、改善に向けた提案も、まさに「エネルギーのプロ」でした。

LPガスを利用する既存の蒸気ボイラーと、電気を利用する循環加温ヒートポンプを併用させることにより、光熱費のトータルコスト約30%削減を達成。

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輸送機器、住宅設備、放送設備など、さまざまな工業製品に利用される金属やプラスチック部品の焼付塗装を主力事業とされる大松工業株式会社さま。40年以上にわたって磨き上げた技術力と独自のノウハウをもとに、日本を代表する大手メーカーの製品の塗装を手がけています。今回は同社専務取締役の松川長久さまに、塗装前処理工程での循環加温ヒートポンプ(CAONS)の導入の経緯、導入で得られたメリットなどについて、お話を伺いました。

大松工業株式会社さま 設備・機器導入のポイント

  1. 既存の蒸気ボイラー(LPガス)と新たな設備・機器の併用により省コスト化を実現。
  2. 熱損失個所の特定から設備・機器導入前後のデータ比較、最適化に向けた調整を実施。
  3. 光熱費のトータルコスト削減を達成するとともに、工場内環境の向上にも貢献。

課題:薬液を加熱する蒸気ボイラーの稼働率を下げ、省コスト化したい。

松川さま

当社では主に、工業製品に使用される金属製部品の塗装を手がけていますが、塗装を行う前には、金属製部品に付着している油分などの汚れを除去しておく必要があります。それが、温めたリン酸鉄を金属部品に噴霧して汚れを落とす「塗装前処理」という工程になります。1.5トンものリン酸鉄が入った槽が複数あるのですが、槽に蓄えられたリン酸鉄を温めるために、LPガスを利用した蒸気ボイラーを利用しています。LPガスを利用する蒸気ボイラーは出力が大きいのですが、その分だけLPガスの使用量も多く、大きなコストを必要としていました。さらに、焼付塗装を行うための窯もLPガスを使用していますから、ガスにかかるコストがとにかく大きく、少しでもコストを抑えたいという想いがありました。そんなときに、関西電力さんから循環加温ヒートポンプ(CAONS)を導入し、蒸気ボイラーの稼働率を下げることによって、光熱費のトータルコストを抑えるというご提案をいただきました。

導入・効果:既存設備を活かしながら、約30%ものコスト削減を達成。

実際に新たな設備・機器を導入するまでに、いくつかのご提案をいただいていましたが、最終的には出力14.0kwの循環加温ヒートポンプを1台採用することになりました。これまで使用してきたLPガス使用の蒸気ボイラーと併用する形で導入しましたので、自動車でいう「ハイブリッド」のような形で、それぞれの持ち味を活かして、コストを最適化できるように細かい測定・調整を継続して行っていただきました。可能な限り蒸気ボイラーの稼働率を下げ、循環加温ヒートポンプの稼働率を上げるという方法を取ることで、リン酸鉄を温める部分で必要となるLPガスの使用量と料金を大きく削減することができたのです。具体的には、LPガスの使用量と料金は、導入前後の比較で約40%の削減を達成しています。循環加温ヒートポンプで使用する電気代を含めたトータルコストを見ても、約30%のコスト削減を達成できています。電気代の上昇分は十分に想定の範囲内に収まっており、事前にご提示いただいていた数値との誤差もほとんどなく、設備・機器導入によるコスト削減効果にとても満足しています。

設備・機器の導入前に行った事前調査などは
お役に立ちましたでしょうか?

導入する設備・機器のご提案をいただく前に、既存設備の「省エネ診断」を実施していただきましたね。サーモグラフィーを搭載した特殊なカメラで工場内のあらゆる場所を撮影し、熱損失が起こっている場所を特定するとともに、より有効な省エネ対策を提案してもらうことができました。私たちが気付かなかったところで、熱を無駄にしていることがよく分かりましたし、すぐに配管の断熱などの処置を行うことができてとても助かりましたよ。そして、そのときの調査結果をもとに、リン酸鉄を温める槽の部分において、蒸気ボイラーの最適な利用方法と、新たな設備・機器の導入という具体的なご提案をいただくことになりました。さらに、イニシャルコストや設備・機器の設置スペース、工場内環境の改善など、さまざまな視点から当社に最適と思われるプランをご提案いただきました。

循環加温ヒートポンプ「CAONS(カオンズ)」とは?

循環加温ヒートポンプとは、空気中から熱を取り込み冷媒を使用して少ない投入エネルギーで循環する水を加温する熱源機です。
CAONSは工場などでご利用される約90℃までの洗浄機や加温装置等に対応が可能で、分散設置ができるので段階的に効果を検証しながらの導入やレイアウト変更などが必要な場合も、柔軟な対応が可能となります。
熱源ユニットは、空気中から熱を取り込んだ後に冷風を排出するため、熱源ユニットを高温になりがちな作業場所などに設置することで、ちょっとした冷房機器のようなお使い方もできます。
※CAONSはメーカーの製品名です。

具体的なご提案内容や、
コスト面以外でご満足いただけた点を教えてください。

当初は蒸気ボイラーを取り払って、大型の循環加温ヒートポンプを導入する案や、小型のものを複数台導入する案などもご提案いただきましたが、最終的に既存の蒸気ボイラーと14kwの循環加温ヒートポンプ1台を併用する方法がベストという結論になりました。その後、リン酸鉄の槽に熱交換器をどのように設置するのかを話し合い、導入後のメンテナンスも考慮しつつ、槽内に設置するということで仕様を決定。実際に設備・機器の設置・導入に至りました。設置後も数回にわたって細かいデータの測定を繰り返し実施していただき、LPガスのコスト、電気のコストを最も低く抑えながら、より効率的に運転できるようチューニングを行っていただきました。循環加温ヒートポンプについては、始業前にタイマーで稼働させ、休憩時間中も稼働を続けるほうがコスト低減につながることや、温水の出口温度については、55℃、60℃、65℃、70℃で計測したうえで、最終的に60℃に設定するのが最も効率の良い運転方法であることもご提案いただき、感謝しています。
新たな設備・機器の導入によって、工場内環境も大きく改善されたのも良かったですね。当社には100℃~150℃にもなる焼付塗装の窯が6つあり、とくに夏場は過酷な環境になります。循環加温ヒートポンプの導入によって、空気中の熱を奪った後の冷風を作業場に送り出すことができるため、従業員が快適に作業することが可能になりました。夏場は本当に涼しく、快適になったので、従業員が設備・機器の前に集まってくるほどです(笑)。

当社からの電話が、設備・機器導入のきっかけだそうですね。

LPガスにかかるコストの大きさは以前から認識しており、省エネ・省コスト化を実現できれば良いなという想いは当然ありました。それでも、具体的にどのような対策をすべきか?それによってどの程度の効果が得られるのか?といったところまでは、なかなかイメージできませんでした。関西電力さんは数年前から省エネ対策のポイントなどについて、電話で頻繁にアドバイスをくださっていたので、「一度、省エネ診断とご提案に伺います」という申し出をいただいたときも受け入れやすかったですね。「エネルギーのプロ」の目で、現状を見てもらうとどうなるのか?という点は、とても興味がありました。定期的な電話でのやり取りをきっかけに、問題点の発見から設備・機器導入の提案、導入後の計測・チューニングによる最適化まで、ここまでの対応を行っていただけたことに驚きましたし、実際に得られた効果にも満足しています。工場は稼働率によってコストが変わってきますから、実際にどのくらいの効果が出ているのかは、請求書の金額から正確に把握することは難しくなります。緻密なデータを計測を行い、その数値をリアルに見せていただくことで、コスト削減のたしかな効果を認識できたことも非常に良かったですね。

担当者のコメント

関西電力 東大阪営業所
灘本彰一

大松工業さまに設備・機器を導入いただくことになったきっかけは、当社からのお電話による省エネ対策の情報提供でした。小さな課題の発見をもとに、お客さまにとって最適な省エネ・省コスト化の施策を提案いたしますので、少しでもご興味がございましたら、どうぞ遠慮なく現状の診断・分析などをお申し付けください。小さな気付きが、大きな成果につながるケースも多々ございますので、お気軽にお声掛けいただければと思います。

大松工業株式会社さま
大松工業株式会社さま
住所
大阪府八尾市太田新町5-38
電話
072-949-0854

1975年の設立以来、金属・プラスチック部品の製造・加工・塗装などを幅広く手がけて発展。現在は、輸送・住設・放送設備等の世界的メーカーの製品に使用される、金属・プラスチック部品等の工業塗装をメインに事業を展開。大手メーカーとの取引に限らず、八尾市・東大阪市等の中小企業との取引も活発に行ない、日本の「ものづくり」を支えている。

掲載の情報は2016年6月現在のものです。
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